2018年10月05日 12:20 公開

性的暴行疑惑で揺れる米最高裁判事候補の承認手続きをめぐり4日、数千人が連邦議会などで抗議し、人気コメディアンのエイミー・シューマー氏など数百人が逮捕された。保守派のブレット・キャバノー高裁判事(53)を最高裁判事に推す与党・共和党は、連邦捜査局(FBI)の捜査の結果、性的暴行の疑いは晴らされたと表明。野党・民主党は反発している。

女性を中心とした数千人のデモ隊は4日、キャバノー判事が現在勤めるコロンビア特別区控訴裁判所を出発点に、市内を行進した。連邦議会議事堂や最高裁の前で集会を開き、「キャバノーは辞めさせなくては!」と繰り返した。さらには、上院のハート議員会館で座り込み、警察に退去を命じられるも拒否。警察によると、302人が逮捕された。その中には、シューマー氏やモデルのエミリー・ラタコウスキ氏も含まれていたという。

抗議する人たちは、「(性的暴行の)すべての生存者を信じる」と書かれた横断幕や、「女性の声を聞かなくては」、「務める資格なし」、「最高裁を救え」、「キャバ・ノー」などと書かれたプラカードを掲げて、承認に抗議した。

連邦議会警察は、廊下を歩く議員たちと抗議する人たちの間に柵を設置した。

ニューヨークのトランプ・タワー前でも抗議集会があった。

承認の見通しは

上院本会議で過半数が承認に賛成すれば、キャバノー判事は終身の最高裁判事となる。

現在の最高裁判事はすでに保守派5人、リベラル4人で、保守派が優勢な構成。終身の最高裁判事たちの政治的傾向が圧倒的に保守寄りになった場合、その判決はトランプ氏の任期満了後も長く米社会に影響を及ぼすことになる。

現在の上院は、共和党が51対49で多数党だが、僅差だけに数人の穏健派議員が造反すれば承認は否決される。

しかし、上院司法委員会でその穏健派共和党議員の1人、ジェフ・フレーク議員(アリゾナ州選出)が求めた連邦捜査局(FBI)の捜査の結果、フレーク議員を含め穏健派議員2人が4日、性的暴行疑惑は裏づけられなかったなどと発言。キャバノー判事承認の公算が強まったとみられている。

上院共和党は5日午前10時半(日本時間同日午後11時半)に「討論終結」の議決を予定している。最終的な承認採決は6日午後5時半(日本時間7日午前6時半)ごろになる見通し。

FBI報告書を評価

カリフォルニア州パロアルト大学で心理学を教えるクリスティーン・ブラジー・フォード教授は、お互いが10代のころにキャバノー氏に性的暴行を受けたと9月末に上院司法委員会で証言した。キャバノー判事は同じ公聴会で、疑惑をすべて否定した。

フレーク議員が、フォード教授の証言内容をFBIが捜査しない限り自分は本会議で承認に反対すると表明したのを受け、ドナルド・トランプ大統領はFBIに捜査を指示。FBIは捜査報告書を4日までにホワイトハウスに提出し、ホワイトハウスが上院に提示した。

上院議員たちによるとFBIは、フォード教授の証言に関連する証人5人に事情聴取したほか、イェール大学でキャバノー氏に露出した性器を突きつけられたと名乗り出たデボラ・ラミレス氏の主張についても4人から事情を聞いた。キャバノー判事はいずれの告発内容も否定している。

上院司法委員会のチャック・グラスリー委員長(共和党)は、「捜査の結果、問題行動があった様子はいっさい伺えなかった」と声明を発表した

一方で、同委員会の民主党筆頭委員、ダイアン・ファインスタイン議員は、FBIの報告書は「不完全な捜査の産物」で、事実関係を裏づけられる複数の重要証人が捜査協力を申し出たにもかかわらず、FBIはあえて事情を聞かなかったと非難した。司法委に所属する民主党のリチャード・ブルーメンソール議員は記者団に「ごまかしだ」と述べた。

これに対して、フレーク議員は「裏づけとなる追加情報はなかった」と発言。同じく共和党穏健派のスーザン・コリンズ上院議員(メイン州)も、「とても綿密な捜査だった」と評価した。

同様に造反の可能性があるとみられていた共和党のリーサ・ムルカウスキ上院議員(アラスカ州)は4日、事務所で性的暴行の生存者と面会したと言われている。

一方で、承認に賛成を検討していたとされる民主党のハイディ・ハイトキャンプ上院議員(ノースダコタ州)は、キャバノー判事の「過去の行状に関する懸念」を理由に、承認に反対することにしたと発表した。

民主党側でもう1人、賛否を明らかにしていないジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州)は、5日の午前中にFBIの報告を読み終えるつもりだと話した。

ホワイトハウスのラージ・シャー報道官は、「(キャバノー判事を)批判する側は、高校生の飲酒について果てしない調査を求めている」と批判した。

一方で、共和党穏健派のジョーン・コーニン上院議員は同僚議員たちに、「これは自分たちがアティカス・フィンチかどうかが問われている」と発言し、周りを驚かせた。アティカス・フィンチとはハーパー・リー作の小説「アラバマ物語」に登場する弁護士で、人種差別の激しい1930年代のアラバマ州で白人女性を強姦したと無実の罪に問われた黒人男性を弁護する。

この間、上院公聴会での激しい口調や、民主党議員に向かって飲酒で記憶をなくしたことはあるのかなど繰り返し問いただした攻撃的な態度、自分に対する性的疑惑は民主党やビル・クリントン夫妻による政治的工作だなどと批判した政治的偏向ぶりなどを非難されているキャバノー判事は、米紙ウォールストリート・ジャーナルに論説を寄稿し、「自分の口調がきつかったことは承知している。言うべきでないこともいくつか言ってしまった」と書いた。

米政界では11月6日に、連邦議会などの中間選挙が行われる。民主党が下院の過半数を奪還する可能性があるだけに、共和党は中間選挙の前に保守派判事を最高裁に送り込みたい構えだ。

(英語記事 Brett Kavanaugh: Hundreds arrested in Supreme Court protest