碓井真史(新潟青陵大学大学院教授)

 日本人は、海外の賞が大好きだ。「モンドセレクション金賞」などと聞くと、とても素晴らしいことに感じる。それがいったい何の賞かは知らなくても、だ。ちなみに数多くの製品が受賞するので、「金賞」と言っても世界一を意味するわけではない。

 もちろん、ミシュランの星も大好きだし、グラミー賞も、アカデミー賞も、カンヌ映画祭にも大注目する。日本国内では全く注目されなかった人でも、海外で賞をもらえば、手のひらを返したように注目が集まり、日本に凱旋(がいせん)するときには多くのマスコミが集まる。そして、何より大好きなのがノーベル賞だろう。

 ノーベル賞は、日本人みんなが知っている。子供でも「大きくなったらノーベル賞を取りたい」などと夢を語る。ノーベル賞の受賞が素晴らしいことであるのは、間違いない。日本人が受賞すれば、もちろん誇らしい。しかし、「騒ぎすぎではないか」との声もある。

 平和賞を除いたノーベル賞授賞式が行われるスウェーデンのストックホルムでは近年、毎年のように「日本祭り」が起きているという。日本人受賞者に対する猛烈なマスコミ攻勢に、現地の人は驚いているようだ。「日本の記者はちょっとクレイジー。私たちはもう慣れているけど、ほかのお客さんは毎回驚いているみたい」と現地ホテルスタッフは語っている(共同通信ロンドン支局取材班『ノーベル賞の舞台裏』ちくま新書)。

 海外からの取材陣の数は、日本よりもずっと少ないようだ。日本人は熱狂するが、「ノーベル賞は国別対抗のオリンピックではない」と選考委員長も語っている。

 日本のテレビ局も、しばらくは追い掛け回す。本人、家族はもちろん、学生、幼なじみ、行きつけの食堂や理髪店まで徹底的だ。

 満面の笑みのリポーターやアナウンサーが「研究の内容は分からないけれど」と言いながら、硬軟取り混ぜた雑多な内容を次々と報じている。日本のノーベル賞報道は、近年さらに過熱しているようだ。

 でも、なぜ日本人はこんなにも海外の賞に弱いのだろうか。どうしてノーベル賞が大好きなのだろうか。
2018年5月、第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門の最高賞パルムドールに輝き、トロフィーを手にする「万引き家族」の是枝裕和監督(ロイター=共同)
2018年5月、第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門の最高賞パルムドールに輝き、トロフィーを手にする「万引き家族」の是枝裕和監督(ロイター=共同)
 日本人は礼儀正しいと言われ、海外の人々から称賛されるほどだ。決まりを守るのが日本人。上の者が作ったルールには従うのが基本である。

 日本人はマナーを守る。コンサートに行けば、どんなにひどい演奏でも、最後まで聞き、拍手をしてアンコールまでする。それがマナーだからだ。海外から来たアーティストたちが感激するほど、良い観客なのが日本人である。むろん、それが本当に良いのかどうかは問題だが…。