2018年10月07日 10:11 公開

米連邦最高裁判所で6日夕、ブレット・キャバノー氏(53)が新しい最高裁判事に就任した。ドナルド・トランプ米大統領が指名したキャバノー判事については、性的暴行疑惑や政治的偏向などをめぐり世論を二分する激しい議論が繰り広げられたが、上院本会議(定数100)は同日、賛成50、反対48で、同判事の就任を承認した。

上院での承認決議を受けて、キャバノー氏は最高裁判所内の非公開の宣誓式で、最高裁判事となった。ジョン・ロバーツ最高裁所長が憲法護持の誓いを司式。引退予定でキャバノー氏がその空席を埋めるアンソニー・ケネディ判事が、不偏不党の公平な判断を誓う司法の誓いを司った。

キャバノー氏の就任に抗議して最高裁前に集まっていた人たちが、正面階段を上り、「キャバノーは辞めさせなくては」などと繰り返し、閉ざされた玄関扉をたたく場面もあった。

最高裁判事の任期は終身。保守派キャバノー氏の就任に先立ち、最高裁判事はすでに保守派5人、リベラル4人で、保守派が優勢な構成だった。引退する81歳のケネディ判事は、保守派ながら人工中絶や同性婚などリベラル寄りの判断を下す「浮動票」として知られていた。その後任となるキャバノー判事が、女性が人工中絶を選ぶ権利などについてどう判断するかが注目されている。

終身の最高裁判事たちの政治的傾向が圧倒的に保守寄りになった場合、その判決はトランプ氏の任期満了後も長く米社会に影響を及ぼすことになる。

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50対48

大統領が指名する最高裁判事候補を承認する役割を担う連邦議会上院は、司法委員会での激しい議論や、キャバノー氏が否定する性的暴行疑惑について連邦捜査局(FBI)の1週間弱の捜査を経て、賛成50、反対48で新判事を承認した。

承認の採択を受けて、トランプ大統領は「米上院が我々の素晴らしい候補、ブレット・キャバノー判事を合衆国最高裁判事に承認したことを、拍手で称え、祝いたい。このあと僕が任命状に署名して、それから判事は、正式に宣誓就任する。とてもわくわくする!」とツイートした。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1048668088059584512

この後、トランプ氏は大統領専用機で同行記者団に対して、キャバノー氏が「民主党のひどい攻撃」を耐えぬいたと話した。キャバノー氏がひどい目に遭わされたと、多くの女性が「激怒している」とも述べた。

36年前にキャバノー氏に強姦されそうになったと名乗り出て、上院で宣誓証言したクリスティーン・ブラジー・フォード教授については、自分を襲った相手の正体を間違えたのだと「100%確信している」と付け足した。

キャバノー氏は性的暴行疑惑を完全に否定していた。一方で、上院公聴会で潔白を主張した際の攻撃的な発言の仕方や、すべては民主党やクリントン夫妻の工作だと強く非難したことから、批判する人たちは最高裁判事としての資質や政治的偏向も問題視していた。10代のころの飲酒などについて、宣誓しながら虚偽の証言をしたのではないかという批判もあった。

本会議での議決に先立ち、キャバノー氏に反対する大勢がワシントンの連邦議会周辺で抗議を繰り返していた。

上院本会議の審議中、傍聴席から「恥だ、恥だ」という合唱が続き、議長として議事進行にあたっていたマイク・ペンス副大統領が繰り返し、静聴を求めた。

現在の上院構成は、共和党51議席、民主党49議席。ほとんどの議員は党の方針に従い投票したため、賛成50、反対48の僅差による承認となった。最高裁判事がこれほどの接戦で就任するのは、1881年以来。

民主党からは、ウェストバージニア州選出のジョー・マンチン議員が党方針に造反して、賛成票を入れた。ウェストバージニア州は伝統的に共和党が有利な保守の地盤で、マンチン議員は11月6日の中間選挙を控え、再選に向けて苦戦している。

マンチン議員が賛成票を入れると、傍聴席から「恥を知れ」などの声が飛んだ。

共和党からは、アラスカ州選出のリーサ・ムルカウスキ議員が、賛成・反対のどちらも入れず、「出席」とだけ答えた。同議員は前日、討論終了の動議に共和党議員として唯一の反対票を入れた。議員は、キャバノー判事について「良い人間」だが、「現時点で最高裁にふさわしくない」、「不適切だという印象は避けがたい」と発言していた。

造反するかもしれないと取りざたされていた共和党穏健派のジェフ・フレーク議員(アリゾナ州)とスーザン・コリンズ議員(メイン州)は、賛成に回った。共和党のスティーブ・デインズ議員(モンタナ州)は娘の結婚式のため、欠席した。

コリンズ議員は5日、本会議で40分にわたり演説し、フォード教授の証言には裏づけがないと、キャバノー判事の承認に賛成する理由を説明した。

投票に入る前に、上院共和党と民主党の院内総務がそれぞれ演説した際には、キャバノー判事をめぐる両党の分断の深さが浮き彫りとなった。

野党・民主党のチャック・シューマー院内総務は、キャバノー氏が様々な論点について「自分の考えを米国民から隠し」、「わざと何度も上院をごまかし」、「候補者として最も攻撃的で最も政治的に偏向した証言」を行ったため、最高裁判事にふさわしくないと力説した。

シューマー議員はさらに、トランプ大統領がフォード教授の証言内容を嘲笑したのは、「これまでに輪をかけて下劣だ」と非難した。

その上でシューマー氏は、キャバノー判事承認に反対する全員にとって「答えはひとつ。投票です」と強調し、11月の中間選挙で投票するよう有権者に呼びかけた。

一方で共和党のミッチ・マコネル院内総務は、キャバノー判事が「真面目な学究の徒で、素晴らしい法学者、周到で熱心な公職者」だと称えた。その承認をめぐるこれまでの激しい対立は、「公平と正義というこの国の基本原理を、きしませた」と、「暴徒による脅し」を非難。「証拠と事実を重視する場所」として上院は「闇から背を向けるため」に投票すべきだと呼びかけた。

(英語記事 Brett Kavanaugh confirmation: Victory for Trump in Supreme Court battle