2018年10月08日 13:41 公開

中国政府は7日、国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)の孟宏偉(メン・ホンウェイ)総裁の身柄を拘束していると発表した。中国の公安省(警察)次官でもある孟氏は、インターポール本部があるフランスのリヨンから中国に向けて9月25日に出発した後、行方不明となっていた。

中国政府は、孟宏偉氏は違法行為の疑いで同国の汚職捜査当局の取り調べを受けていると説明した。具体的な違法行為については明かされていない。

インターポールは、7日に孟氏から総裁を即時辞任するとの連絡を受けたと明らかにした。

公職者の汚職摘発を担う国家監察委員会は、ウェブサイトに公開した声明の中で、孟氏が捜査対象となっていると表明した。

中国では、多くの著名人が行方不明になっており、インターポール総裁もその1人となった。他にも、多くの政府高官や資産家、さらには大物芸能人までもがここ数カ月間で行方をくらましている。

10月上旬には、中国で7月から行方が分からなくなっていた女優の范氷氷(ファン・ビンビン)氏が姿を現し、公に謝罪した。范氏には脱税などの違法行為で8億8300万元(約146億円)の罰金が科されている。

現地で取材する特派員たちは、インターポール総裁の地位獲得はかつて中国政府にとって大きな成果とみなされていただけに、習近平国家主席による大々的な汚職摘発運動の一環でその総裁を拘束したとなると、孟氏がいったい誰を怒らせたのか、あるいはいったい何をしたのかが注目されると指摘する。

インターポールの対応

インターポールはツイッターで、孟氏からただちに辞任すると連絡を受けたと明らかにした。

インターポールは規定に従い、韓国出身のキム・ジョンヤン副総裁を臨時総裁に指名した。

孟氏は任期を2年残しており、新総裁は11月にドバイで開かれる総会で選出される予定だ。

インターポールは6日、総裁の身の安全を懸念していると表明し、中国政府に孟氏の状況を明らかにするよう要請した。フランス当局は捜査を開始したが、7日の時点で、新しい情報はないと明らかにしていた。

孟氏の妻は

中国が孟氏の身柄拘束を明らかにする直前、孟氏の妻グレースさんは記者団に対し、夫の身に危険が迫っていると思うと語っていた。

グレースさんは声を震わせながら、夫の拘束は「国際法と国際世論」に審判されるはずだと述べ、発見に協力して欲しいと国際社会に訴えた。

グレースさんによると、行方不明になった日、孟氏はソーシャルメディア経由で「自分からの連絡を待つように」と伝えてきた。さらに続けて、危険を意味する刃物の絵文字が送られてきたという。

「夫の身に何が起きたのか分からない」とグレースさんは話した。

自分の安全のためカメラに背中を向けたグレースさんは、涙をこらえながら中国語と英語で声明を読み上げた。

「私たちは常に心で繋がっています。私がこうすることを、夫は支持してくれるはずです。これは公平と正義の問題であり、国際社会の問題であり、私の母国の人たちの問題です」

孟宏偉氏とは

孟氏は2016年11月、中国出身者として初めてインターポール総裁に選出された。任期は2020年までだった。

総裁として、インターポールの全体的な指示を出したり方向性を指揮したりする執行委員会を率いていた。

中国では、主に麻薬、テロ対策、国境警備の分野を中心に40年にわたり、刑事司法や警察活動に携わってきた。

孟氏がインターポール総裁に選出された際には、国外へ逃れた中国反体制派を中国政府が追及しやすくなる可能性があるとして、人権団体が懸念を示していた。

インターポールの機能

インターポールは、行方不明者には黄手配書、指名手配者には赤手配書(国際警告)を発行して、加盟国と協力して捜査を行う。ただしインターポールには、各国へ職員を送って個人を逮捕したり逮捕状を発行したりする権限はない。

192に上る加盟組織の日常業務を監視するのは主に事務総局で、総裁の役目はほとんどが儀礼的なものだ。


<分析> 中国共産党の影響はどこまで――ロビン・ブラントBBC記者(北京)

孟宏偉氏がインターポール総裁に選ばれた2年前、「諸外国が中国の司法制度を理解できるようになるだろう」と書く中国の新聞があった。

今回の展開は当時期待されていたものとは違うはずだ。孟氏は「辞任」し、中国当局に拘束されたらしい。このことから、中国政府関係者にとって何より大事なのは中国の法律と、支配政党・中国共産党の規則なのだと明らかになった。たとえフランスで働く要職に着いたとしても。

今年新設された中国国家監察委員会は、孟氏は「法律違反」のため捜査を受けていると明らかにした。

政府幹部の拘束でよく使われる「党の規則違反」という表現がなかったのは、大事なポイントだ。

政府関係者の汚職摘発にあたる同委員会は、習主席が強力に推進する腐敗撲滅運動の一環としてすでに数千人を標的にしてきた。

孟氏の場合、習政権になって失脚した元党幹部と近い関係にあることが、今回の拘束の理由だという見方もある。


(英語記事 Meng Hongwei: China confirms detention of Interpol chief