2018年10月11日 11:28 公開

ズー・ピン・チャン BBCビジネス担当記者

国際通貨基金(IMF)は8日、最新の世界経済見通しを発表した。この中でIMFは、米国と中国の貿易戦争が、世界を「より貧しく、より危険な場所に」する危険性があると警告した。

IMFはまた、2018年と2019年の世界全体の経済成長率予測をともに引き下げた。

米中の貿易戦争が本格化すれば、経済回復を大きく落ち込ませる危険性があるとIMFは指摘している。

IMFチーフエコノミストのモーリス・オブストフェルド氏は、貿易障壁がさらに増えれば、家計や企業、そして経済全般に広く打撃を与えるだろうと述べた。

「貿易政策は政治を反映するし、政治はいくつかの国で不安定なままになっており、一層のリスクを生んでいる」とオブストフェルド氏は話した。

直近では中国が、液化天然ガスなどの製品を含む米国産品600億ドル相当に新たな貿易関税を課すと発表した。液化天然ガスは米国内ではドナルド・トランプ米大統領への支持が厚い州で生産されている。

トランプ氏は9月のツイートで、中国が11月の米中間選挙に干渉しようとしていると書き、中国政府を牽制(けんせい)した

「もしこの国の農家や牧場主、それに工業労働者が標的にされたら、中国に対する経済的報復は大規模で素早いものになる!」とトランプ氏はツイートした。

米国は先月、2000億ドル相当の中国製品に対する追加関税を発動した

世界の経済成長へのリスク

IMFは今回の発表で、2018年と2019年の世界全体の経済成長率を3.7%と予測した。7月に発表された前回の見通しでは経済成長率予測は3.9%だったため、今回は0.2ポイントの下方修正となった。

IMFは短期予測に対するリスクが「下方に傾いている」と述べた。

世界経済成長の下方修正は、ユーロ圏の拡大が鈍化するとの予測や、多くの新興市場経済における混乱も反映している。

経済危機が起きているベネズエラは2019年、6年連続の景気後退に突入すると予想されており、来年にはインフレ率が1000万パーセントに達するとの予測もある。

最近IMFからの資金援助に合意したアルゼンチンも、2018年と2019年は経済が縮小する見込み。

貿易戦争はどこまで悪化する

加熱する米中の貿易関税合戦は、2019年の両国の経済成長にも打撃を与える見通しだ。トランプ大統領の大規模減税による浮揚効果も、失速し始めるとみられる。

生活水準の向上、教育の改善と不平等の減少に世界の指導者が協力して取り組まなければ、世界は「より貧しく、より危険な場所」になるだろうとオブストフェルド氏は述べた。

IMFは、もし米国が全ての輸入車に25%の関税を導入するとの脅しを実行し、世界各地の関税が景況感や投資、借入費用にも影響するようになれば、世界の成長率は決定的な打撃を受けると警告した。

この最悪のシナリオでは、米国経済は深刻な傷を負う。また同時に、現在6.2%となっている中国の2019年の経済成長率予測は、5%未満まで下落する。

英国とブレグジットへの言及は

英国経済は今年は1.4%、2019年は1.5%成長する予測になっている。

IMFは「合意なき」ブレグジット(英国の欧州連合離脱)が危険性を残していると指摘した。

また、ブレグジットで英国経済は様々な形で根本的に変化するため、相当数の労働者が職を失うとIMFは考えている。

IMFは、「ブレグジット後に高くなる貿易障壁の影響を強く受ける可能性が高い」産業の労働者に対し、英政府が再訓練や再配置を実施する必要があると述べた。

IMFは一方で、英国の金利は、インフレを引き起こさない範囲で向こう数年は引き上げを継続する必要があると指摘。イングランド銀行には、今後も「柔軟」であり続けるよう求め、ブレグジット交渉の結果に応じてに応じてどちらにも方針転換できる用意を整えておくよう呼びかけた。

英国の公的債務は、向こう数年は減り続けるだろうとIMFは予測している。

しかし、税収と公的支出の差分を埋めるため、財務省は2023年に約160億ポンド(約2兆3820億円)を借り入れる見通しだ。

(英語記事 US trade war would make world 'poorer and more dangerous'