偵察衛星にはデジタルカメラのように光で撮影する光学衛星と、電波を反射させるレーダー衛星がある。光学衛星は1メートル以下の物体を見分けるほど精細な画像を撮影できることがメリットで、IGSの光学衛星は30センチ程度の物体を見分けられる性能(分解能)があるとされているが、米国の光学偵察衛星は20センチ未満とみられる。

 レーダー衛星は、分解能こそ1メートル程度と光学衛星に劣るものの、雲を透視して地上を撮影できることや、夜間も撮影できることが大きなメリットだ。このため光学衛星で識別した目標の移動を追跡するといった使い方ができる。

 IGSは光学衛星とレーダー衛星を2機ずつの計4機、予備機などを含めると計7機(8月31日現在)が運用中で、1日に地球上の一つの場所を光学で昼間2回、レーダーで昼夜2回ずつ撮影可能な体制となっている。今後は撮影間隔を短くするため、IGSの数を倍の8機に増加することが決まっている。

 安全保障寄りの衛星はIGSのほか、測位衛星の準天頂衛星システム「みちびき」を内閣府で、防衛通信衛星「きらめき」を防衛省の民間資金活用による社会資本整備(PFI)事業で運用している。測位衛星は安全保障だけでなく民間も含めあらゆる活動の役に立つ衛星だが、代名詞ともなっている米国の衛星利用測位システム(GPS)は軍事用に開発されたもので、民間用途に開放された現在も空軍が運用しているなど、安全保障にも欠かせない衛星と言える。

 宇宙基本計画ではIGS以外にも、将来の安全保障目的の衛星の検討が掲げられている。

 早期警戒衛星はミサイル発射の火炎を宇宙から探知する衛星で、冷戦時代の目的は「敵の核ミサイル発射を探知し、こちらが全滅する前に核ミサイルを発射して報復すること」だった。このため核を保有しない日本には不要な衛星だったのだが、現在はイージス艦や地対空誘導弾パトリオット(PAC3)などの弾道ミサイル防衛システムに第一報を発することも重要な目的となっている。

 現在、自衛隊は弾道ミサイル発射の探知を米軍の早期警戒衛星に頼っているほか、国民に弾道ミサイルの危険を伝える全国瞬時警報システム(Jアラート)もこの情報を利用している。そこで宇宙基本計画は「早期警戒機能」の調査研究を掲げており、防衛省が開発したミサイル探知用の赤外線センサーをJAXAの地球観測衛星「だいち3号」に搭載して、2020年に技術実証を行う予定だ。

 また、宇宙基本計画には記載がないが、防衛省の平成31年度概算要求では「宇宙領域における電磁波監視態勢の在り方に関する調査研究」が新規事業として掲載された。これは地球上の通信電波を傍受する電子情報収集(エリント)衛星を指すものと思われる。米国のものは直径約100メートルもある巨大なパラボラアンテナを備える衛星だ。
日本の衛星「みちびき」の想像図(準天頂衛星システムウェブサイトより)
日本の衛星「みちびき」の想像図(準天頂衛星システムウェブサイトより)
 宇宙基本計画には特定の衛星開発だけではなく、総合的な施策である宇宙状況監視(SSA)や海洋状況把握(MDA)も掲げられている。

 SSAは人工衛星や宇宙ごみ(スペースデブリ)がどのような軌道を飛行し、どんな形状をしているのかを観測して把握することを指す。現在はJAXAが観測を行っているが、加えて防衛省がSSA用レーダーを整備するなど、体制を強化している。また宇宙空間で他の衛星やデブリを観測するための専用衛星の検討も挙げられている。