西恭之(静岡県立大グローバル地域センター特任助教)

 宇宙空間における米軍の戦力の整備(編制・訓練・装備)または運用を、空軍から別組織に分ける方法はいくつかあるが、トランプ大統領は、宇宙軍を管理する宇宙軍省も新設するという、最も大がかりな方法を選んだ。

 それゆえ、宇宙軍構想は法令や組織の整備に時間がかかるものとなっており、国防総省は宇宙軍省・宇宙軍の新設に消極的だ。議会上院の約3分の1と下院の全議席が改選される11月6日の中間選挙後、来年1月3日に開会するまで、国防総省は必要な法案の審議を先送りすることができる。

 宇宙軍構想はトランプ大統領の政治的な色がついている上に、議会では上院よりも下院の方が積極的なので、中間選挙で野党の民主党が下院の多数党となった場合、実現する見込みは低い。

 この問題を理解するには、まず米軍がどのような仕組みで戦力を整備し、作戦を指揮しているのかを概観するのがよいだろう。

 米軍は陸軍省・海軍省・空軍省の3省と、陸軍・海軍・海兵隊・空軍の4軍種からなっている。3省の長官には、上院の承認を経て文民が就任し、それぞれの軍種の戦力整備を受け持っている。海軍省は平時から海軍と海兵隊を管轄し、議会による宣戦布告または大統領の指示があった場合は、沿岸警備隊を編入する。なお、3省の長官は、国防長官の部下なので閣僚ではない。

 3省が整備した戦力を軍事作戦で運用するのは、統合軍(ユニファイド・コマンド)である。軍事作戦の指揮系統は、大統領―国防長官―統合軍司令官と法律で定められている。統合軍は10個あり、そのうち6個は米インド太平洋軍のように地理的に定義され、4個は米戦略軍のように機能別に定義されている。統合軍は2省以上の部隊からなり、幅広く恒久的な任務を担っている。米インド太平洋軍の下の在韓米軍のように、「サブ統合軍」(サブ・ユニファイド・コマンド)が設置されることもある。
ホワイトハウスで軍関係者を前に演説するトランプ米大統領=2018年5月、ワシントン(AP=共同)
ホワイトハウスで軍関係者を前に演説するトランプ米大統領=2018年5月、ワシントン(AP=共同)
 なお、「米軍制服組トップ」とも呼ばれる統合参謀本部議長は、軍事作戦の指揮系統に入っていない。その任務は、大統領や国防長官に軍事的な助言を行い、また、3省が整備した戦力が統合軍司令官のニーズを満たすと保証することである。

 宇宙空間については現在、戦力の整備を担当する空軍宇宙軍団司令官が、昨年12月1日から米戦略軍の統合軍宇宙構成部隊司令官を兼任して、作戦の指揮統制も行っている。