鍛冶俊樹(軍事ジャーナリスト)

 トランプ米大統領が6月、宇宙軍創設の指示を出した。マスコミはトランプの発言をとかくフェイクと見なしたがる。そこで、この発言もトランプ一流の大ぼらかのような報道ぶりだった。

 もっとも、マスコミの責任ばかりとは言えない。米国は1980年代、当時のレーガン大統領がスターウォーズ計画を発表した。当時から人気のSF映画の題名そのままに、レーザー砲で旧ソ連の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を破壊する画像がニュースなどで繰り返し流されたものだった。

 結局、米ソ冷戦の終結で、この計画も沙汰止(さたや)みになった。ただし、ここで開発された技術が現在のミサイル防衛に生かされているので、レーガンの大ぼらだったというのは言い過ぎであろう。

 とはいえ、発表当初から膨大な予算を必要とすることから実現を疑問視する声が絶えず、ICBMをレーザーで破壊する画像が文字通り絵に描いた餅に終わったのは事実である。

 従ってトランプの宇宙軍創設も当初マスコミは大統領の大ぼらと見なしたわけだが、8月にペンス副大統領が具体的な計画を打ち出し、にわかに現実性を帯び始めた。なにしろペンスは誠実な人柄で知られ、マスコミからも評価が高いからだ。

 ペンスは「2020年までに宇宙軍を設置する」と述べ、それまでの当面の措置として宇宙担当の国防次官補を新たに任命し、統合宇宙司令部、宇宙作戦部隊、宇宙開発局を設置すると発表した。

 さらに9月、ロイター通信は米国防総省の試算として、宇宙軍創設の費用について1年目に30億ドル超、その後4年で100億ドル、要員は1万3000人以上、と具体的な数字を報じた。

 レーガンのスターウォーズ構想には、こうした具体的な数字が出てこなかった。しかもこの数字は現実的な数値だ。宇宙軍創設はもはやトランプの大ぼらでもなければ、絵に描いた餅でもない。

 トランプは宇宙軍創設の発表時、「第6軍として宇宙軍を創設する」と述べた。「野球だって2軍までだ。それを第6軍とは何事ぞ?」といぶかる声もあったが、これを理解するためには各国の軍種を認識しなければなるまい。
ミッション(任務)の内容がほとんど公開されず「謎の宇宙機」と呼ばれるX-37(米空軍提供)
ミッション(任務)の内容がほとんど公開されず「謎の宇宙機」と呼ばれるX-37(米空軍提供)
 20世紀半ばにおいては陸軍、海軍、空軍の3軍種が世界標準だったが、米国の場合、第4軍として海兵隊、第5軍として沿岸警備隊が位置付けられている。そこで宇宙軍は第6軍となる。

 しかし、宇宙空間が初めて軍事化されたのは第2次世界大戦であり、ドイツが初の弾道ミサイルV2を開発してからである。戦後、軍事衛星が配備されるに至り宇宙の軍事化は急速に進んだ。