米国においてはICBMなどの弾道ミサイルや軍事衛星は空軍の所掌とされていた。つまり、米空軍は事実上、航空宇宙軍だった。対するソ連や中国では空軍とは独立した軍種として戦略ロケット軍が設けられた。特にソ連は米国の軍事衛星を破壊するための衛星、キラー衛星を開発していた。

 軍事衛星は敵情を低高度で細かく観察する偵察衛星、高高度で弾道ミサイルの発射を監視する早期警戒衛星、情報伝達のための通信衛星などがあるが、米軍のこれらの衛星と同じ軌道上にソ連はキラー衛星を打ち上げ、戦争勃発と同時に米軍衛星を一気に破壊する計画だった。

 これが成功すれば、米国はソ連がICBMを撃っても、それを認識すらできないうちに壊滅するわけだ。もちろん米国もソ連の軍事衛星を破壊するためのミサイルを開発していたため、米ソ大戦が勃発していたら、最初の戦場は間違いなく宇宙だったはずだ。

 そしてソ連崩壊後、新たな軍事大国として台頭してきたのが中国である。中国の海洋進出は今やインド太平洋地域での大問題であるが、中国の軍事拡大は海軍や空軍に留まらない。むしろ宇宙分野こそ隠れた大問題だと言ってよかろう。

 2007年1月に中国は、中国上空850キロの軌道上にあり、すでに機能を停止した気象衛星を弾道ミサイルで破壊した。当時、宇宙ゴミとして国際的に問題視されたが、その実、軍事関係者に与えた衝撃は大きかった。

 というのも、中国が衛星破壊実験を行い成功したということは、ソ連と同じ軍事的意図を持っているとしか考えられないからである。すなわち、米国との核戦争に勝利しようとする意図である。

 2008年9月、中国は宇宙船「神舟7号」で宇宙飛行士の宇宙遊泳に成功した。ロシアの援助を受けていたが、それでも宇宙開発の目覚ましさに世界中が驚いた。2011年には宇宙ステーションの原型となる「天宮1号」の打ち上げに成功した。翌年には宇宙飛行士3人が乗り込み中国初の宇宙ステーションとなった。16年には「天宮2号」の打ち上げに成功している。
中国の習近平国家主席(左)と米国のトランプ大統領=北京(AP)
中国の習近平国家主席(左)と米国のトランプ大統領=北京(AP)
 こうした宇宙開発の姿は1950年代後半からのソ連の宇宙開発を彷彿とさせる。1957年にソ連は人類初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功し、1961年にガガーリンによる人類初の有人宇宙飛行に成功した。

 米ソの宇宙開発競争においてソ連は当初優位な位置を占めていたが、この競争の実態は宇宙戦争に他ならず、その背景には米ソ冷戦があった。中国はこの時のソ連の軍事思想と技術を継承している。

 ちなみに中国は「天宮宇宙ステーション」を2020年に完成させる予定である。なぜ、ペンスが「2020年までに宇宙軍を設置する」と述べたのか、これで分かるだろう。そして、ペンスはワシントンのハドソン研究所で、中国の覇権主義を非難するとともに全面対決すると宣言した。その内容はかつて英国のチャーチル首相が米国で行った「鉄のカーテン」の演説(米ソ冷戦のさきがけとなった)にも比せられている。

 トランプの宇宙軍創設は決して口先だけのものではない。それは中国との全面対決を視野に入れた明確で緻密な計画なのである。