日銀の片岡剛士政策委員は、最近の講演で「耐久財やサービス消費はぶれを伴いながら増加しているものの、飲食料品や衣料品などを含む非耐久財消費は低迷が続いており、家計消費には依然として脆弱(ぜいじゃく)性が残っている」と指摘している。妥当な見方だろう。

 しかも、問題は前回の経験でいえば、消費が一度落ち込むと、回復が長期間見られないことだ。これは現実の経済成長率の足を引っ張る。また、完全雇用の水準近くまで来た失業率の改善も、ここで再びストップするだろう。さらにはインフレ目標の達成が当面困難になるのは明白である。

 1年後の経済成長率や雇用の状況を今から予測することは、現在の米中貿易戦争などの事態を考えると不透明であり、確言するのは難しい。ただし、2014年の引き上げ時点に比べれば、雇用の状況は少なくともはるかにいいことが、ただ一つの救いである。

 ただし、筆者が片岡氏と、2013年10月に「消費増税ショックと今後の経済政策」(『日本経済は復活するか』(藤原書店)所収)で書いたことは、今回もほぼそのまま通用する。

 消費増税は恒久的な影響を持つので、一時的な財政対応ではその負の影響を打ち消すのは難しいだろう。特に金融政策の効果がここでまた大きくそがれることになることは、アベノミクスの根幹を揺るがすに違いない。ただ、14年4月当時よりも経済状況は現時点ではいい(1年後は何度も書くが分からない)。過度な悲観は禁物だが、過度の楽観はかなり皮相な見方だ。

 日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は、今度の消費増税が前回に比べて、3分の1か4分の1のマイナスの影響にとどまると楽観的である。だが、黒田総裁は前回の消費増税の影響も過小判断していた。その反省はどう生かされたのだろうか。

 そもそも、彼を支える雨宮正佳副総裁ら日銀エコノミストたちは、完全雇用時の失業率水準が3・5%と主張してきたトンデモ集団であり、その反省はいまだ聞こえてこない。「自省なき官僚集団」に堕しているのが、日銀生え抜き集団の特徴だ。黒田総裁の発言もその影響ではないか。
2018年10月、G20財務相・中央銀行総裁会議の閉幕後、記者会見する麻生財務相(左)と日銀の黒田総裁=インドネシア・バリ島のヌサドゥア(共同)
2018年10月、G20財務相・中央銀行総裁会議の閉幕後、記者会見する麻生財務相(左)と日銀の黒田総裁=インドネシア・バリ島のヌサドゥア(共同)
 安倍首相の消費増税引き上げの決断は、冒頭にも書いた通り、特上の下策である。おそらく消費増税を実施すれば、金融緩和により負担がかかるだろう。だが、その負担に応えるだけの対応がなされるのか、いまの「黒田-雨宮ライン」を見ていると不安しかない。

 先の田中・片岡論説で指摘したのは、消費増税への対応に、まず日銀法を改正し、雇用の安定化とインフレ目標の導入を明記すること、また政府の目標を名目経済成長率4%、実質経済成長率2%に引き上げることである。そして、今の日銀がまだなんとか保持しているように、物価水準が2%を超えても緩和姿勢を続けることを表明し続けることが重要だ。この政策の大枠を変更すること、いわゆるレジーム(政策ルールの束)の転換が求められるのである。