2018年10月16日 12:39 公開

米民主党の有力者、エリザベス・ウォーレン米上院議員(マサチューセッツ州選出)は15日、自分が米先住民の血を引いている「強い証拠」となるDNA鑑定の結果を公表した。

ウォーレン議員はかねてから先住民の祖先を持つと話していたが、ドナルド・トランプ米大統領は同議員を「偽のポカホンタス」と呼ぶなど演説などでからかい、DNA鑑定を受けるよう挑発していた。

DNA鑑定によると、ウォーレン氏は6~10代前に先住民の祖先がいるという。

ウォーレン氏が2020年の米大統領選に出馬する準備を進めているという見方もある。

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何が明らかになったのか

11月の中間選挙で再選を狙うウォーレン議員は15日、DNA鑑定の結果と共に、家族や同僚が同議員の血筋を話し合う動画を公開した。

ウォーレン氏のDNA鑑定は、スタンフォード大学の遺伝子学者カルロス・ブスタマンテ氏が行った。

鑑定結果では、ウォーレン氏の「大部分の」祖先は欧州出身だが、米先住民の祖先がいることが「強く示された」という。

マサチューセッツ州の地元紙ボストン・グローブは、ウォーレン議員は64分~1024分の1、先住民の血が入っていると報じている。

ウォーレン氏自身は特定の先住民ネーション(主権体)に属していない。DNA鑑定はウォーレン氏の家系に先住民が含まれていることを確定しているものの、その信ぴょう性を批判する声もある。

先住民チェロキー・ネーションの長官を務めるチャック・ホスキン・ジュニア氏はこの日、「DNA鑑定は先住民としての市民権確定には不十分」との声明を発表し、各ネーションには独自の法的要件があると述べた。

「DNA鑑定を使って、わずかでもチェロキーや他のネーションとのつながりを宣言することは不適切であり、間違っている」

「これはDNA鑑定とその合法的な使用を軽んじるだけでなく、法的に認められたネーションと祖先がきちんと登録され、出自が確定している先住民の名誉を傷つけている」

ウォーレン氏が公開した動画は、トランプ大統領が演説で「ウォーレン氏は自分が先住民だと言った。だから僕はポカホンタス!って言ったんだ」と冷やかす様子から始まっている。

ポカホンタスは17世紀に実在した先住民女性で、先住民に捕らえられた英国人の開拓者ジョン・スミスの命を救ったと伝えられ、ディズニー映画の題材にもなっている。

その後、動画では共和党員だというウォーレン氏の兄弟も交え、大統領のからかいを批判した。

チェロキー・ネーションの一員でもあるウォーレン議員のいとこは大統領の発言について、「彼女のいとことしてだけではなく、先住民としての私にとっても攻撃的だ」と発言した。

政敵は中傷の道具に

ウォーレン氏をめぐっては2012年、ハーバード大学ロースクールに少数民族出身と登録されていたことが発覚して以来、血筋から優遇措置を得ていたことを否定している。

ホワイトハウスや共和党は繰り返し、ウォーレン議員が先住民の子孫だとの主張でキャリアを有利に進めてきたと批判している。

トランプ大統領は今夏モンタナ州で行った集会で、もしウォーレン議員が本当に先住民の血を引いていると証明したら、慈善団体に100万ドル(約1億1200万円)寄付すると発言した。

2012年には共和党員2人が、当時、上院議員候補だったウォーレン氏に対し、先住民を侮辱する仕草をした様子が録画された。

今回のDNA鑑定についてホワイトハウスのケリーアン・コンウェイ顧問は記者団に「誰もが結論ありきで、自分に都合のいい疑似科学を選びたがる」と話した。

ウォーレン氏が公開した動画には、サラ・サンダース・ホワイトハウス報道官が「最も攻撃的なのは、ウォーレン議員が先住民の子孫だとうそをついてキャリアの足しにしていること」と述べている場面もある。

サンダース報道官への返答として、動画では何人ものウォーレン氏の同僚や雇用主が同氏の祖先がキャリアに関係したことはないと証言する様子が映された。

ウォーレン議員は併せて、出自がキャリアに影響を及ぼしていないことを証明する書類などを公開している。

動画の中でウォーレン氏は、自分を批判する人たちは中傷や「私が戦っている変化を妨げるため」に自分を攻撃しているのだと話した。

「トランプは私について言いたいことが言えるが、私を攻撃するために先住民や他のあらゆるグループを馬鹿にする? それはアメリカらしくない」

トランプ大統領のオバマ氏批判との共通点

ウォーレン議員の祖先をめぐる騒動は、バラク・オバマ前大統領が受けた攻撃を思い出させる。

オバマ氏の大統領選期間中、トランプ氏は繰り返し、オバマ氏が米国で生まれたことを証明するために出生証明書を公表するようと訴えていた。

オバマ氏が米国人ではないとのうわさは大統領任期中も続いていたが、オバマ政権は2011年に同氏の出生証明書を公表し、論争を終結させた。


分析――アンソニー・ザーカー、北米特派員

エリザベス・ウォーレン上院議員は何年にも渡って、急進的な左派のスターだった。そして、改選に向けた11月の中間選挙を前にして、ウォーレン氏はすでに2020年の大統領選挙の民主党候補になるべく明確な一歩を踏み出した。

その準備作業の一環として、ウォーレン氏はドナルド・トランプ氏が繰り返してきた先住民の血筋についての疑問や、「ポカホンタス」という冷やかしへの防御策を打ち立てた。有利なDNA鑑定の結果を盾に対抗するとともに、その出自から学術的なキャリアで優遇措置を得たことはないと繰り返し強調している。

だからといってこれでトランプ氏の攻撃が止むことはないだろうが、ウォーレン氏はこれで矛先をかわし、賃金格差と政府の倫理改革という、彼女が走る可能性が高まっている大統領選での主要課題に取り組めるようになる。

大統領候補選が選挙の2年以上前から動き出すのは普通ではない。しかし多くの人が立候補を狙う中、速攻はアドバンテージとなる。ウォーレン氏は急進派の票を得るため、バーニー・サンダース氏といった大御所相手に厳しい戦いを強いられるだろう。

もし彼女が勝つなら、その一歩一歩が重要となる。


(英語記事 Trump opponent Warren reveals DNA test