関根嘉香(東海大理学部教授) 

 「加熱式タバコ」は、タバコ葉を電気で加熱する、あるいはタバコ葉に蒸気を通じ、生じた「煙」を吸うための装置です。従来の「紙巻きタバコ」との大きな違いは、葉に火をつけて燃やさないという点です。

 紙巻きの場合、煙には主流煙(喫煙者が吸い込む煙)、呼出煙(喫煙者が吐き出す煙)、副流煙(火をつけたタバコの先端から立ち上る煙)の3種類があります。副流煙は燃焼温度が低いため、不完全燃焼によって生じる有害な化学物質を多く含むことが知られています。

 これらの中で、呼出煙と副流煙はあわせて「環境タバコ煙 (Environmental Tobacco Smoke)」ともいわれ、「望まない受動喫煙」の主たる原因になります。最近では、環境タバコ煙が壁や衣類に付着し、一部の化学物質が空気中に再び放散され、これに非喫煙者が曝露する3次喫煙(サード・ハンド・スモーク)という現象も知られています。

 加熱式タバコは、現在国内では3社から販売されています。タバコと名がつくから近寄らないという人もいると思いますが、「百聞は一見にしかず」です。一度、実際吸っている人に話を聞いてみるとよいと思います。

 加熱式タバコは喫煙者が吸うときだけスイッチが入り(機種によってはスイッチを入れて吸う)、吸うとき以外は煙が発生しません。すなわち、副流煙が発生しない、あるいは極めて少ないのです。副流煙には有害な化学物質が多く含まれていましたから、これがほとんど発生しないということは、望まない受動喫煙を防止する上で有効といえます。

 一方、加熱式タバコもタバコの一種ですから、主流煙は当然発生し、そこにはニコチンが含まれます。ちなみに、コンビニなどでよく見かける「電子タバコ」や「VAPE」と称される製品には、ニコチンは含まれていません。

 主流煙が発生すれば、喫煙者から呼出煙が出てくるので、これを問題視する人もいるでしょう。そこで、主流煙中に含まれる有害化学物質を調べる必要があります。各メーカーが公表した資料を見ると、紙巻きタバコに含まれる有害化学物質の量に比べて約90%減などと記載されています。
飲食店で加熱式たばこを吸う男性。受動喫煙対策の規制対象となる方向で調整されている=2018年6月
飲食店で加熱式たばこを吸う男性。受動喫煙対策の規制対象となる方向で調整されている=2018年6月
 筆者らの研究グループは、独自に加熱式タバコの主流煙分析を行っていますが、例えば発がん性物質として知られるホルムアルデヒドは、あるメーカーの加熱式タバコは紙巻きタバコに比べ、約300分の1という結果が得られました。

 米国食品医薬品局(FDA)でも、加熱式タバコ「IQOS」(アイコス)は紙巻きタバコに比べ、人体に有害もしくは有害の恐れがある物質の含有量が少ないことを認めています。加熱式タバコの主流煙に新たな有害化学物質が見つからない限り、この認識はおおむね妥当でしょう。

 ただし、紙巻きタバコ同様に加熱式タバコも喫煙の仕方によって主流煙に含まれる成分の量が変化することがあります。このような変化も考慮し、主流煙中の化学成分を定量的に求め、リスクがどの程度あるのかを判断しなければなりません。