先に成立した改正健康増進法(受動喫煙対策法)では、飲食店などの屋内では原則禁煙となり、紙巻きタバコだけでなく加熱式タバコもその対象になりました。専用の喫煙室内では吸うことができますが、喫煙室に求められる条件(喫煙室の入り口から室内に向かって毎秒0・2メートル以上の空気の流れがあること)は同じです。

 有害物質の発生が少ない加熱式タバコが、なぜ同じように規制されるのでしょうか。一つの理由として、紙巻きと加熱式のユーザーが共存する点です。両者を併用するユーザーもいるでしょう。紙巻き用と加熱式用でそれぞれ喫煙室を設けるのであれば、求められる気流条件は異なってきます。

 しかし、二つの専用喫煙室をどれだけの店舗・施設で用意できるでしょうか。2020年という時限を前提に、健康リスクを回避する政策を現時点で決めるとすれば、安全サイド(より危険な方の基準に合わせる)を選ぶのは致し方ない部分もあります。でも、これでは加熱式タバコという発明の恩恵が全く無視されたことになります。

 筆者は1990年代後半に中国の大気汚染対策として「有害な煙の出ない石炭」を開発し、その普及を目指しました。研究・開発には中国側の公的機関からも協力をいただき、工場を2カ所建設して量産試作までこぎつけました。しかし「石炭」であるという理由だけで、製造・販売の許可が下りないことになり、実用化の一歩手前で断念せざるを得ませんでした。

 科学者の創意工夫により生じた発明物を、正当な評価を受ける前に法的枠組みで禁じるのは、新しい科学技術の発展を阻害するものです。加熱式タバコは、望まない受動喫煙の軽減に寄与する科学技術といえます。「タバコ」だから良くないと短絡的に考えてはいけません。この新しい科学技術を生かすにはどうすればよいかという発想も必要でしょう。
受動喫煙防止条例について説明する東京都の小池百合子知事(中央)=2018年6月
受動喫煙防止条例について説明する東京都の小池百合子知事(中央)=2018年6月
 もちろん、加熱式タバコにおいても有害化学物質の発生はゼロではありません。ただし、その健康リスクがどの程度なのか、紙巻きタバコとの比較だけなく、調理や燃焼器具、自動車排ガスなど、私たちの身近な生活の中になるリスク要因と比較して検討する必要があり、もし技術的な問題が見つかれば改良すればよいのです。

 科学技術は常に更新されながら発展していきます。喫煙者と非喫煙者が共存できる社会を作るにはどうすればよいか、科学技術立国としての知恵の出しどころです。