田部康喜(東日本国際大学客員教授)

「歌は世につれ世は歌につれ」
(ある時代によく歌われる歌は、その時代の世情を反映しているものだ:大辞林)


 NHK「紅白歌合戦」は今年67回目を迎える。ラジオ時代の1951(昭和26)年1月3日に第1回目が開催された、この番組が年末を飾るようになったのは第4回の1953(昭和28)年からのことである。

 冒頭のことわざのように、この番組は歌によって世相を映してきた。それとともに、歌が誕生した時代を超えて、歌い継がれていく――そこには、時代が歌の誕生の世相を超えていくのではないか。つまり、人々が歌い始めた時に歌に託した感情が、時を経て変化して、歌が再生する。

 『紅白歌合戦と日本人』(筑摩選書・太田省一著)は、そのように述べたうえで紅白歌合戦のなかで歌い継がれてきた歌をその例としてあげている。

 「坂本九の代表曲の一つ、『見上げてごらん夜の星を』(1963)は、永六輔が作曲家いずみたくとともに制作した同名のミュージカルの主題歌である。ミュージカル『見上げてごらん夜の星を』の主人公は、集団就職で都会に出てきて、働きながら夜学に通う高校生だった」

 今回の紅白では、ゆずがオリジナルの歌詞も加えて「見上げてごらん夜の星を~ぼくらのうた~」として歌う。

 「手をつなごうボクと  追いかけよう夢を 二人なら ぼくらなら 苦しくなんかないさ」
1969年11月、大晦日の恒例、NHK紅白歌合戦の司会者発表で握手する白組の坂本九(左)と伊東ゆかり(紅組)。中央は総合司会の宮田輝アナウンサー
1969年11月、大晦日の恒例、NHK紅白歌合戦の司会者発表で握手する白組の坂本九(左)と伊東ゆかり(紅組)。中央は総合司会の宮田輝アナウンサー
 オリジナルの歌詞は、やはり坂本九の「上を向いて歩こう」とともに、2011年3月11日の東日本大震災後の人々の胸に染み入った。

 この年の紅白の大トリは、今年で解散するSMAPの「not alone」だった。前述の著作のなかで、太田省一は次のように指摘する。