ラリー遠田(お笑い評論家、ライター)

 「『テレビ離れ』は本当か?」と聞かれたら、結論はもちろん「イエス」だ。各種データが示しているように、10代から20代までの若者の間では確実にテレビ離れが進行している。

 例えば、NHKの「国民生活時間調査」によると、平日1日の中で15分以上テレビを見ている人の割合(テレビの行為者率)は、60代男性では1995年に96%、2015年には93%だった。一方、10代男性では、1995年に90%だったのに対して、2015年には74%にまで落ちている。20代男性でも同じ期間に81%から62%に急落している。

 50代以上ではテレビの行為者率がほとんど落ちていないのに対して、10代と20代では男女ともに目に見えて落ちている。数字の上では若者がテレビを見なくなっているのは明らかだ。

 この点に関して、「若者はテレビの代わりにインターネットで動画を見ている」「スマートフォンが普及したことで若者がテレビを見る時間が減った」「大学に進んで一人暮らしを始める学生がテレビを買わなくなった」などと言われることもある。それらもある程度は正しいのだろう。

 ただ、私はここで若者のテレビ離れの理由を改めて分析する気はない。そこを掘り下げても、どこかで聞いたことがあるような当たり前の理由しか出てこないだろうと思うからだ。「屋上屋を架す」ようなことはしたくない。

 私はむしろ最初の問いを、少し角度を変えて考えてみたい。そもそも、若者以外の人たちは、なぜいまだにテレビなんかを見ているのだろうか。

 誤解されるといけないので初めに断っておくと、私はテレビの悪口を言いたいわけではない。むしろ、私自身はどちらかと言うとテレビに思い入れのある側の人間である。

 1979年生まれで、テレビ文化にどっぷり漬かって育ってきた世代だ。テレビ好きが高じて、大学卒業後はテレビ制作会社に入り、アシスタントディレクター(AD)として働いていたこともある。テレビに対しては並々ならぬ愛情があると自負している。

 ただ、ここでは、そういった個人的な思い入れはいったん置いておいて、今の時代におけるテレビの状況を冷静に考え直してみたい。娯楽が多様化し、ネットが普及して、手軽に好きなものを好きなだけ楽しめるようになった現代において、テレビを見続けている人が一定数存在することの方が、今や不思議である。
2017年8月、NHKニュースを映す家電量販店のテレビを食い入るように見つめる来店客=茨城県水戸市(鴨川一也撮影)
2017年8月、NHKニュースを映す家電量販店のテレビを食い入るように見つめる来店客=茨城県水戸市(鴨川一也撮影)
 中高年を中心に、多くの人がいまだにテレビを見続けている理由は、「習慣」以外の何ものでもない。テレビは家のリビングにあり、見たいと思ったらいつでもすぐに見られる。この圧倒的な「リーチ力」こそがテレビの強みである。フジテレビの買収を試みたときのライブドア元社長の堀江貴文氏も、このリーチ力が欲しかったのだ。

 出版業界で「雑誌の危機」が叫ばれているのは、雑誌を買って読む習慣が滅びつつあるからだ。最新のニュースがいつでもどこでもスマホで読める時代に、書店や駅の売店で活字が印刷された紙の束を売るというビジネスが、人々の習慣から外れてしまうのは当然だろう。