2018年10月21日 19:54 公開

英国の欧州連合(EU)離脱について英政府がEUと交わす最終合意の内容について、国民に賛成・反対の意思表示をする機会を与えるよう求める行進が20日、ロンドンで実施された。主催者発表で約70万人が参加した行進は、英国のEU離脱(ブレグジット)について過去最大級の抗議行動となった。

「People's Vote (人民の投票)」運動に賛同した人たちが、ロンドン中心部を議会議事堂前の広場まで行進した。政府の合意内容について国民の信任を得るべきだという一部の下院議員も、行進に参加した。

ロンドン警視庁は、参加人数は推計できなかったとしている。

テリーザ・メイ英首相はこれまでに、ブレグジット合意に関する国民投票は実施しないと言明している。

ブレグジットの是非を決めた2016年6月の国民投票で、英国民は賛成51.89%、反対48.11%でブレグジットに賛成した。その時点では、離脱合意の具体的な内容は決まっていなかった。

英国はEU基本条約(リスボン条約)第50条にもとづき、2019年3月29日にEUを離脱する予定。

かねてから2度目の国民投票を求めていたロンドンのサディク・カーン市長は、行進の先頭に立った。ほかにも、人気俳優や映画監督などの著名人も行進に参加し、議会前広場で次々に演説した。

カーン市長は群集を前に、「(すでに国民投票で決まったブレグジットに対する)一般投票は非民主的で非愛国的だという人たちが、実際にはその正反対が真実だと気づくこと。これが何より大事だ」と呼びかけた。「英国民の判断力を信頼すること。これほど民主的で英国的なことが、ほかにあるだろうか」と市長は訴えた。

2度目の投票に賛成の人たち

英国各地から大型バス約150台が、大勢を乗せてロンドン中心部のパーク・レーンに集まった。英最北スコットランド・オークニーから来た人たちもいた。

現場で取材したシャーロット・ギャラガー記者によると、幼い子供を連れた若い家族が多く、「子供の将来が心配なので参加した」と口々に話していた。政党や職場グループ、医療スタッフの集団、LGBT(性的少数者)のグループ、愛犬家の集まりなどがそれぞれまとまって歩く姿もあった。

2016年の国民投票ではまだ投票権のなかった若者も、大勢が参加した。

南東部ピーターバラから12歳の息子、リオ君と参加したアリータ・ドイルさん(46)は、「自分の子供たちの未来と欧州の団結のため」行進していると話した。

南部ハンプシャーから参加したリオ・バックリーさん(16)は、「(ブレグジットで)一番損をするのは、若者だ。ブレグジットのせいで僕は経済的に不利になるし、これまでのような就職の機会も失ってしまう」と述べた。

高齢者の参加もあった。ロンドン南部クロイドンのジョー・トリッキーさんは行進しながら、83歳の誕生日を祝い、「EUは平和と力の拠り所だと強く信じている」と話した。

テレビの料理番組で知られる有名シェフ、ディリア・スミスさんは集まった人たちに、ブレグジットは「私たちの人生で何より大事な問題」だと語りかけ、「下院議員たちに言いたい。お願いですから何とかしてくださいと。お願いだから、皆さんが仕える私たち国民に、発言の機会を与えてください」と訴えた。

映画「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズなどで人気の俳優・監督、アンディー・サーキスさんは、妻や14歳の息子と参加し、「(ブレグジットについて)前より情報が得られるようになった今、国民があらためて意思表示をしている」のだと話した。

国民投票で住民の大多数がEU残留を支持したスコットランドのニコラ・スタージョン自治政府首相は、行進応援の声明を出し、党首として率いるスコットランド国民党(SNP)はEU残留を選択肢に含む投票の実施を支持すると表明した。

ブレグジットに反対する医療従事者を代表するマイク・ゴールズワージー医師はBBCニュースに、「(国民投票で)離脱と賛成のどちらに入れたにせよ、契約書が戻ってきたら細かい内容を点検して、『いや、いや、いや、違う。この内容には署名したくない』と言う権利は誰にでもある」と話した。

労働党のブレア政権の広報担当だったアラスター・キャンベル氏は、「約束されたブレグジット、賛成運動が成功したブレグジットは、実際には存在しない」と述べた。その一方でキャンベル氏は、「国民投票のやり直しは無理だと思う。あの時の議論では、我々(残留派)が負けた。それは受け入れないとだめだと思う。なので今議論するべきは、ブレグジット合意の内容についてだ」と付け足した。

2度目の投票に反対の人たち

ロンドンでの行進とほぼ同時に、英北部ハロゲイトでは、ブレグジット賛成派の集会が開かれた。

集会を主催したイギリス独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ前党首は、「(2016年の国民投票で)残留に入れた人の3割が今では、この国は民主国家なのだから、政府はさっさと交渉を進めるべきだという意見らしい。それが我々の主張だ。さっさと進めろ、約束を果たせと。国民が離脱に投票したら、離脱すると政府は約束したのだから、そうするべきだ」と述べた。

「離脱は離脱」グループの創設者、リチャード・タイス氏はBBCに対して、「2度目の国民投票をやるべきだなどというのは、非常にまずい考えだ。この国のあらゆるところで、民主主義に対する信頼を傷つけてしまう」と話した。

(英語記事 People's Vote march: Hundreds of thousands attend London protest