田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 安倍晋三首相は、25日から3日間の日程で訪中し、習近平国家主席ら中国首脳と会談を行う予定である。日中友好平和条約が発効して今年で40年の節目を記念したもので、日本の首相としては約7年ぶりの訪中となる。前回は民主党政権の野田佳彦前首相の時代だったので、もちろん第2次安倍政権では初となる。

 安倍首相の訪中としては、第1次安倍内閣のときの2006年10月における「電撃訪問」が思い出される。当時の胡錦濤国家主席と対談し、そこで「戦略的互恵関係」や、共同プレス発表という形で「日本の戦後の平和国家としての歩み」を評価したことで知られる。

 後者の「平和国家としての日本の歩み」を評価したのは、中国側からすれば最大限のリップサービスだったのだろう。その後、中国側の尖閣諸島周辺への侵入が常態化していくことを想起すると、中国側の「譲歩」の後には「ごり押し」や無法行為が待っているようにも思える。

 今回の訪中は、トランプ政権との「米中貿易戦争」の真っただ中で行われるために、国内的な関心も高く、国際的にも注目されているだろう。しばしば、米中貿易戦争では、日本が漁夫の利を得ると報道される場合がある。今回の訪中もそのような文脈でとらえる論調もある。だが、それは大きな誤りだろう。

 最近の中国が明らかにしているのは、自由で民主的な社会の価値観とは全く異なる国家権力の膨張である。つまり、中国的ルールをもとにした監視社会、尖閣諸島や南アジア、インド洋、アフリカなどで展開されている大国主義的活動、不透明な経済体制である。「異質」という表現よりも、日本や欧米主要国と対立し、むしろ抗争的な価値観を実行している国家といっていいだろう。

 一言で表現すれば「人権圧殺国家」だろう。新疆ウイグル自治区では、イスラム系住民を中心に約100万人が拘束され、「行方不明」になり、収容所で「再教育」を受けている。

 彼らは「洗脳施設」に収容され、自分たちのアイデンティティーである民族的誇りや宗教的信条を奪われ、常に監視状態に置かれるという。まさにディストピア(反理想郷)である。
2018年9月、「東方経済フォーラム」全体会合で、中国の習近平国家主席(左)と並んで入場する安倍晋三首相(代表撮影)
2018年9月、「東方経済フォーラム」全体会合で、中国の習近平国家主席(左)と並んで入場する安倍晋三首相(代表撮影)
 日本のメディアでは、ウイグルでの人権弾圧をあたかも「右派」や「保守」の専売特許のように認定し、単なる「中国嫌い」とでもいうべき言論として扱うおかしな識者もいる。まったく見下げた論評だ。