2018年10月23日 13:46 公開

著名記者ジャマル・カショジ氏の殺害におけるサウジアラビア政府の役割に関心が高まる中、スティーブン・ムニューシン米財務長官は22日、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と同国の首都リヤドで会談した。一方でトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、「ありのままの真実」を23日朝に明らかにする方針を示している。

トルコ当局は、カショジ記者がイスタンブールのサウジ総領事館で2日に殺されたと主張している。

サウジ当局は矛盾する説明を繰り返したが、現在は実行者の「勝手な計画」による「殺害」だったとの立場を取っている。

サウジ当局は当初、カショジ記者が総領事館を訪れたその日のうちに立ち去ったとしていた。その後19日に説明を変更。カショジ記者が死亡したと初めて認め、同氏は「殴り合い」の末に殺されたと述べた。

<関連記事>

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、この問題に関する「ありのままの真実」を23日の議会で明らかにすると話している。

リヤド会談の話題は

サウジ国営メディアは、ムニューシン財務長官とムハンマド皇太子が「サウジアラビアと米国間の戦略的関係の重要性」を強調したと伝えた。

米財務省報道官は、ムニューシン長官と皇太子が、経済と対テロ問題、そしてカショジ記者の死亡について話し合ったと明らかにした。

会談は開かれたもののムニューシン長官は、リヤドで始まった大規模な投資会議への出席を取りやめた。西側諸国の他の政治家や実業家の多くも、会議欠席を表明している。

ドナルド・トランプ米大統領の最新発言からは、米国が対応を決めかねている様子が示唆される。

トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し、サウジ政府のこれまでの説明には「満足していない」と話した。

ただし、サウジアラビアとの巨額武器取引に言及し、「この国に対する投資を全て失いたくはない」と付け加えた。

大統領は、「真相究明」を約束している。

<サウジアラビアと国際社会:解説記事>

トランプ氏はまた、サウジアラビアで最も大きな権力を握る人物とみなされているムハンマド皇太子と、記者殺害について話し合ったと明かした。

サウジ当局は、記者殺害をめぐり同国は18人を逮捕し、ムハンマド皇太子の側近2人を解任したほか、情報機関再編のため、ムハンマド皇太子を委員長とする委員会を設立すると発表している。

サウジ政府見解の変化

サウジアラビアのアデル・アル・ジュベイル外相は21日、記者殺害が「勝手な計画」だったと、米フォックス・ニュースに対して発言した。

アル・ジュベイル外相は、「我々は必ず、すべての事実を明らかする。この殺人の責任を負う者を罰するつもりだ」と述べた。

「実行者たちは、自分の権限の範囲を超えてこれを行った」とアル・ジュベイル外相は付け加えた。「ひどいミスがあったのは明らかだが、隠蔽しようとしたせいでさらにひどいことになってしまった」。

外相によると、遺体がどこにあるかサウジ政府は把握していないという。

政府高官による筋書きなのか

ムハンマド皇太子が殺害を指示したわけではないと、外相は強調した。

しかし、トルコ政府に近い同国メディアのイェニ・サファクは、記者殺害の後に皇太子の事務所が総領事館から4度の電話を受けたとの情報をつかんだと伝えている。

ロイター通信は21日、カショジ記者は首を絞められて死亡したとするサウジ当局者の証言を得たと報じた。この当局者によると、カショジ記者は自分をサウジアラビアに戻そうとする企てに抵抗し、殺された。カショジ氏の遺体はその後、じゅうたんで巻かれ、処分のため現地の「共同実行者」に引き渡されたという。

その後、サウジ工作員はカショジ記者の衣服を身に着け、総領事館を離れたという。

米CNNは、カショジ記者の服を着たサウジ工作員が、監視カメラ映像に捉えられていたとするトルコ高官の話を報じた。

CNNが入手した防犯カメラ映像では、カショジ記者が殺された当日、同記者の服を着て、偽ひげをつけ眼鏡をかけて、総領事館の裏口から出る男の姿が見える。

防犯映像の男は別の人物と共に、イスタンブールの繁華街を歩いた後、カショジ記者の服を遺棄している。

これとは別にトルコ警察は、サウジ総領事館が所有する自動車をイスタンブールの駐車場で発見した。

トルコメディアはさらに、イスタンブールのサウジ総領事館職員がカショジ氏が行方不明になった翌日に書類を焼く様子だという動画を公開した。

世界の指導者の反応は

世界中の多くの指導者が殺人を非難し、詳細な調査を求めている――。

  • ドイツのアンゲラ・メルケル首相は「事件は解明されなければならない」と述べ、そうでなければサウジアラビアに武器は輸出しないと表明した
  • ジェレミー・ハント英外相は記者殺害を「最も強い言葉で」非難すると述べた
  • ジャン=イブ・ル・ドリアン仏外相は、この殺人は深刻な犯罪だと述べた
  • カナダのジャスティン・トルドー首相は、数十億ドル規模の防衛関係取引を中止すると警告した
  • トルコのエルドアン大統領は、サウジアラビアの説明をごまかしだと非難した

しかし、クウェートやエジプトなど中東地域のサウジアラビアとの同盟国は、サウジ政府を支持している。

一方、リヤドで23日から開かれる予定の未来投資会議、通称「砂漠のダボス」会議には、少なくとも40人以上が出席を取りやめた。

ただ会議には依然として数百人が出席し、実務的な問題について代表者が話し合う予定だと、リヤドで取材するセバスチャン・アッシャーBBCアラブ問題編集長は報告する。アッシャー編集長は、サウジアラビアの大きな未来がこの会議にかかっているとした。


<解説>トルコ、「詳細な説明」を約束――フランク・ガードナーBBC安全保障担当編集委員

トルコメディアに対する、計算された、生々しい情報流出は数週間に及んだ。そしてついに、トルコのエルドアン大統領は、強く待望されていた声明を23日朝に発表する。

カショジ氏に何が起きたのかについて、トルコは何も隠さない「詳細な説明」を約束している。

では、エルドアン氏の発表には、広く報道されているサウジ総領事館で録音されたという音声テープは含まれるのだろうか? カショジ氏殺害の実行部隊が持っていたとの疑いがかかる「骨用のこぎり」の証拠は?

これら2つの要素が重要なのは、何が起きたのか、そしてカショジ氏殺害派犯の動機が何なのかについて事実を検討するのに不可欠だからだ。もし骨用のこぎりの証拠が導かれれば、リヤドから到着した実行部隊が確かに殺人の意図を持っていたことになる。

カショジ氏殺害の音声テープは、もし存在するのであれば、聞くのは非常に苦痛かもしれないが、カショジ氏がどのように死んだのかの謎を解く決定的な要素になる。だが、トルコ自身が、地球上のどんな国よりも大勢のジャーナリストを投獄してきた国だ。自分たちがどんな証拠を持っているか隠す理由が、トルコ政府にある可能性もある。

全ての事情が明らかになるには、もう少し待たなければいけないかもしれない。


(英語記事 Khashoggi death: US meets Saudi crown prince despite criticism