ジュリー景子氏は仕込まれた帝王学と潤沢な資金を背景に事務所経営は大丈夫だろうが、プロデューサーとしてジャニー氏の代わりは一切務まらない。衣装のプランやビジュアル面では現場経験があり、女優として演じていた時期もあるが、アイドル候補を発掘して育成、その上でステージのすべてを作り上げる才能も力もない。

 つまり、ジャニーズのエンターテインメントの本質においては全く役に立たないのだ。それは母親であるメリー喜多川氏(ジャニー氏の姉)も同じで、最強の営業力と管理能力を持っていても演出やプロデュースには縁がない。専らそれはジャニー氏の仕事であり、彼にしかできない。実際、これまで姉や姪(めい)であっても演出分野においては一切、口を出していない。

 ジャニー氏がずっと心配してきたことといえば、ジャニーズ事務所の存続ではなく、ジャニーズがジャニーズであり続けるために自分の思想を受け継いでくれる分身的な後継者がいないという現実だった。そもそもジャニー氏は当初、自分しかできないことを他の誰かに引き継ぐ気などなかった。

 生涯現役であり続けることにこだわってきただけに、これまで後継者の話題が出てこなかったのもその証拠だ。自分以外が代わりを務められるわけがないと、そう思いながらここまできたのだ。

 しかし、事態は一転した。それはSMAPの解散騒動だ。ジャニー氏はあの騒動で、ジャニーズが壊れていく様子を垣間見てしまった。これは想像していなかったことで、あまりにショックが大きかったのだ。国民的アイドルとして絶頂にありながら、ジャニーズを離れていくアイドルがいる現実は受け入れ難いものがあった。

 SMAPの解散を受け、「ジャニーズの終焉」や「ジャニー氏の求心力の衰え」といった、そんな声が嫌ほど入ってくる事態になり、このままにしておくわけにはいかないと感じたのだろう。

 そこで、信用できる自分の分身を考えたとき、たった一人、タッキーしかいなかったのだ。タッキーには、ジャニーズとジャニー氏への最上の愛があり、誰よりも自分を理解していると感じていたようだ。
(イラスト・不思議三十郎)
(イラスト・不思議三十郎)
 重視したのは、アイドルとして歌って踊れるだけでなく、ジャニーズにとって最も大切なステージ(生舞台)をプロデュースできる点だ。ジャニー氏のまねをしながら育ってきたタッキーは、いつしか匹敵するレベルの能力を培っていたという。

 もう少し、ジャニー氏がタッキーを選んだ理由を記しておこう。メジャーアーティストを輩出した人数などが世界一としてギネス認定されるほど人を見る目に長(た)けたジャニー氏だが、その能力と同時に白黒ハッキリした好みがある。

 ルックスや性格など一般的な好みはもちろんだが、際立って興味を示すのはそのアイドルの持っているプロフィールにある。まず、家族構成だ。どういった環境で育ってきて今どのように暮らしているのかに強い興味を持ち、さらに、その環境が幸か不幸かによって好みが強く出てくる。