小倉正男(ジャーナリスト)

 ふるさと納税の規制が騒がれている。国(総務省)は地方自治体に対し、国の規制に従わない場合は、ふるさと納税から除外すると通知した。

 地方自治体の多くは、内心は不満を抱えているにしても、ここはともあれ逆らわずに従う姿勢をみせている。しかし、数カ月~半年も過ぎれば、また元に戻るのは確実とみられる。いったん踏み出して飛躍的に拡大して定着したものを通知一本で規制するというのはもともと無理がある。

 ふるさと納税は、「選択の自由」を基軸に地方自治体に寄付・納税して返礼品が送られてくるというものだ。地方自治体も寄付・納税者の「選択の自由」に対応して、選ばれる価値のある商品・サービスを返礼品にラインアップしている。

 地方自治体は、ふるさと納税によって競争原理に目覚めたのだ。返礼品で他の地方自治体と競い合って、寄付・納税者に選ばれようとするのはマーケット原理であり、自然な成り行きだ。しかし、国はこの動きを推し戻し、地方自治体は設定した枠内でおとなしくしていろというわけである。

 とはいえ、「パンドラの箱」、この場合は国にとってのパンドラの箱だが、すでに開けられたものをまた半分閉じろというのは困難でしかない。むしろ、ふるさと納税が提示した地方自治体の生き残り競争を一層促進させる方向に歩を進めるべきではないか。
 
 ふるさと納税は、2007年に創設が発表され、08年度にスタートした。制度をつくったのは当時の菅義偉総務大臣(現官房長官)ということである。なるほど苦労人というか、知恵者でないとこういう制度は出てこないな、と思う次第である。

 07~08年という時代にもうなずかされる。バブル崩壊後の長期不況期で、雇用も定昇を含む賃上げもなく、株式市場は死んでいたような状況だった。大銀行が巨額の不良債権処理から財閥グループの枠組みを超えて合併するといった業界再編成を経て間もないという、まさにドン底の低迷期である。

 しかも、世界的にはそれまで空前の好景気だった米国でサブプライムローンが焦げ付き、リーマン・ショックに行き着くことになった。国内に続いて世界規模で巨大金融危機に恐怖していたような時期にほかならなかった。

 雇用も賃上げもないドン底期なのだから、国も地方も税収に苦しむことになった。所得税、住民税、法人税、消費税など税金徴収が上がらず、国は地方に地方交付税交付金、補助金などを削減する挙に出ていた。その代わりに考案・創設されたのが、ふるさと納税ということになる。いわば申し訳程度の埋め合わせというか、苦肉の策でふるさと納税は生み出されてきたわけである。
記者会見する野田聖子総務相。ふるさと納税制度に関し、抜本的に見直す方針を表明した=2018年9月11日
記者会見する野田聖子総務相。ふるさと納税制度に関し、抜本的に見直す方針を表明した=2018年9月11日
 ふるさと納税の創設以前はどうだったのか。実のところ、税金の名目や名前はどうあれ、戦後一貫して国による「ふるさと納税」は行われてきている。高度経済成長の余韻のある時期は、国から地方交付税交付金、補助金が都道府県市町村の地方自治体にふんだんに配分されていた。地方交付税は、本来は地方税だが、国が地方になり代わって徴収し、国が地方に配分する。名目は「地方間の不均衡を調整する」というものである。

 もっとも、都道府県では税収が途方もなく潤沢な東京都のみは不交付だった。だが、他の道府県は例外なく交付されていた。市町村もまったく同様で、財政赤字を地方交付税交付金、補助金で補塡(ほてん)するのはいかにも当たり前といった調子だった。