小黒一正(法政大経済学部教授)

 「ふるさと納税制度」が2008年度の導入から10年が経過した。制度上、ふるさと納税制度(根拠法は地方税法第37条の2)は寄付税制の一種に位置付けられている。

 ところが、地域の特産品を返礼品として受け取ることを目的に、この制度を利用して寄付する個人が急増する一方、その個人が居住する地元自治体や国の税収が減収する問題が顕在化してきた。実際、総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」によると、2008年における全国の寄付総額は約72億円、適用者が約3万人だったが、2016年では2566億円、適用者も227万人に急増した。また、できる限り多くの寄付を集めようと、過度な返礼品を提供する自治体も一部で出てきた。

 このような状況の下、2018年9月11日、野田聖子前総務相が、ふるさと納税制度を正式に見直す方針を表明した。10月に内閣改造が行われたものの、新たに就任した石田真敏総務相も、10月2日の記者会見で「ふるさと納税制度につき、役所内で見直しの検討をしていると聞いており、その結果を踏まえて対応していく」という発言を行い、急速に見直しの可能性が高まりつつある。

 では、ふるさと納税制度の何が問題なのか。そもそも、「ふるさと納税は寄付でなく、実質的な節税スキームではないか」という指摘も多い。

 この意味を簡単に説明しよう。まず、ふるさと納税制度を利用してある個人が寄付すると、その個人は寄付額から2千円を差し引いた金額を、所得税や個人住民税から寄付金控除できる。ちなみに、所得税の控除は総所得金額などの4割、住民税の控除は総所得金額などの3割が上限である。

 この寄付金控除は通常の寄付の場合と同じだが、ふるさと納税では、この寄付金控除の適用以外にも「特例控除」が適用できるため、個人住民税(所得割)の2割を上限とする金額も控除できる。このため、一定の上限内で寄付すると、寄付額から2千円を差し引いた額を全て減税でき、寄付した個人の負担は2千円のみにできる。

 しかも、一定金額相当の返礼品を受け取る多くのケースでは、その返礼品の価値から2千円を差し引いた金額を実質的に節税できるというメリットも享受できる。例えば、ある個人が10万円の寄付を行い、3万円相当の返礼品を受け取ると、この個人は2千円の負担で3万円相当の返礼品を受け取ることができる。

 寄付を受け取った自治体は7万円の収入増になる一方、この個人が居住する自治体と国は9・8万円(10万円-2千円)の減収となる。これは、この個人は2・8万円相当(3万円-2千円)の節税が可能となることを意味する。
石田真敏総務相(萩原悠久人撮影)
石田真敏総務相(萩原悠久人撮影)
 また、この個人が20万円の寄付を行い、5万円相当の返礼品を受け取ると、2千円の負担で、5万円相当の返礼品を受け取ることができ、4・8万円相当(5万円-2千円)の節税が可能となる。つまり、より所得の高い個人ほど、ふるさと納税制度の利用で効果的な節税が可能となるわけで、不公平な制度である。

 では、何か解決策は存在するのか。現在のところ、総務省は自治体に対して返礼品の相当額を寄付の3割以内に抑制するように指導している。この割合を2割や1割に縮小させることが解決策の一つである。