もう一つの解決策は、ふるさと納税制度だけに認められている「特例控除」を廃止または縮小することである。あるいは、返礼品の相当額は控除を適用しない制度に改正することも一案だ。

 ところで、ふるさと納税制度の創設目的は、人口減少や過疎化が急速に進む中、税収の減少に悩む自治体の財源格差の是正にあったが、この制度だけで財源格差をならすのは極めて難しいのは明らかである。国土交通省の「国土のグランドデザイン2050」によると、2010年から2050年で人口が5割以上減少するエリアは6割も存在するとされ、2050年ごろまでに自主財源が5割以上も減少する自治体が急増しても不思議ではない。

 また、社会保障費の急増や財政赤字の恒常化で、国の財政も厳しいため、国や地方が担う公共サービスにさまざまな「綻(ほころ)び」も目立ち始めている。公共を担うのは国や自治体だけでなく、非営利活動を行う団体や社会起業家なども存在し、多様な担い手の育成が必要だ。

 そのような状況の下で、重要な視点となるのが、ふるさと納税制度という枠を取り払い、民間活力も利用した形で公共サービスに近いものを各地域で供給可能とする寄付市場の拡充ではないか。

 そこで、筆者が提言したいのは、ふるさと納税制度をベースとして、「非営利ファンド」(仮称)や寄付税額控除とセットの「公設寄付市場」(仮称)を創設する新たな構想である。具体的には、株式市場の仕組みを参考にして、以下の政策を推進してはどうか(図表を参照)。

 ふるさと納税では、インターネットでのマッチングをフル活用している。そこでこの新たな構想でも、まず寄付者と、寄付を募る団体との情報の非対称性を埋めるためにネットを活用する。すなわち、寄付を募る団体(自治体を含む)やプロジェクトのうち「優良適格要件」を満たすものと、寄付者をマッチングし、ネット上で簡単に寄付可能な「公設寄付市場」を創設するのである。

 具体的には、情報の透明性を図る観点から、公設寄付市場は、寄付を募る団体などの財務・運営体制や目的・内容・実績を審査・公表する。審査とともに、その格付けを行い、寄付者や団体の発掘に努力する。他方、寄付者はこの情報をベースに、団体やプロジェクトに対してか、あるいは「一任寄付」方式で寄付する。一任寄付とは、寄付者が分野指定するものの、公設寄付市場に寄付先を原則委託する方式のことだ。なお、ミクロ的効率性を高める観点から、公設寄付市場は、東証の収益方式を参考に、一定の優遇措置や収益源を確保させつつ、免許制の民間組織としていくつか設立し、競争させる。

 また、この寄付市場活性化の起爆剤として、「寄付税額控除」や「非営利支援ファンド」を創設する。このうち、非営利支援ファンドは公設寄付市場が運営し、一定要件を満たす団体やプロジェクトを審査して無償資金として支援する。

 なお、それでも起爆剤が不足するときは、相続税の一部を活用する戦略も考えられる。野村資本市場研究所の試算では、現在の相続額は年間50兆円程度もある。これに1%追加課税すると、約5千億円の財源が捻出できる。2%ならば約1兆円も捻出可能だ。この財源をベースに、公設寄付市場などの規模を拡充するのである。
2018年8月、東京都千代田区で行われたふるさと納税の地域を応援するという制度本来の趣旨を伝えるPRイベント
2018年8月、東京都千代田区で行われたふるさと納税の地域を応援するという制度本来の趣旨を伝えるPRイベント
 また、支援対象は、寄付を募る自治体や公共サービスだけではなく、非営利活動を行う通常の団体やプロジェクトにも適用することが望ましい。子育て支援や介護などの分野は、既存の制度を補完する受け皿として、自治体以外にも、もっと多様なサービスを供給する団体が存在してもよい。このような新しい非営利活動を行う団体も、国民のニーズに応じて、自然に設立され、成長していく機会も提供できよう。

 いずれにせよ、以上の枠組みであれば、ふるさと納税の枠組みをバージョンアップし、個人や法人が、自治体を含む支援先の団体や公共サービスなどを直接選択する機会を提供することが可能となる。同時に、公設寄付市場の審査・公表を通じて、寄付を募る側の意識改革も進み、より質の高い寄付市場の育成を図ることも期待できるはずだ。