田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 政治家の驚くべき発言には事欠かないが、自民党の竹下亘前総務会長が講演の中で今後の消費税について語ったものは、その無責任ぶりと妄信的な性格で群を抜いている。

 報道が正しければ、消費増税について「10%で打ち止めというわけにはいかないと感じております。いくらになるかは予想はできませんが、まだ上げなければ、財政再建には寄与できない」と、竹下氏は述べたという。

 自分でも予想できないにも関わらず、上げるだけ上げないといけない、というふうに解釈できる。「財政再建」がお題目になっているが、これではまるで増税することが自己目的化しているといわれても仕方がないだろう。

 しかも、竹下氏のこの発言は、政権のいくつかを犠牲にしても政治家の使命としてやらなければいけない、という精神論付きである。10%を巡る国民的議論から見ると、お粗末な内容としか言いようがない。

 戦前の日本政府や軍部、そして官僚組織も具体的な数字を示すこともなく、特定のスローガンを精神論的に掲げる中で自壊していった。その構造と竹下氏の発言は変わらないといえる。

 ちなみに、財務省による税率の水準は、21世紀の初めあたりは15%だったが、今では18~20%の範囲に上昇しているというのが「通説」である。竹下氏の発言と同様にその上限の先は見えない。

 また、竹下発言では、過去の消費増税がなければ日本はとうに破綻していたという認識を披露している。これも極めて疑わしい話だ。1989年の竹下登内閣による消費税導入以後、消費税収の動きだけ見れば「安定」した財源のように見える。だが、これはもちろん一部分だけ切り取っているだけの話である。

2018年10月、北九州市で行われた会合で
話す自民党竹下派の竹下亘会長
 要するに、消費税収が「安定」的な財源になる一方で、他の税収が不安定化し、より重要なのは経済全体が不安定化していることだ。この理由は、消費増税のもたらす経済への悪影響がある。

 確かに、89年の導入時点では、経済が過熱気味であったため、それを抑制する効果があったかもしれない。だが、消費増税は、経済が過熱していても停滞していても、持続的に税の重圧を掛けていく、恒久的な増税という特徴があることを忘れてはいけない。

 日本の90年代初頭からの「失われた20年」は、金融政策の失敗が原因であった。さらに、これに財政政策との協調の失敗が重しとなっている。経済が停滞していても、消費税は恒久的にこの不調極まる経済の重しとなっていた。