日本人特有の気質なのかわからないが、いったんお上が決めた法律や増税は、変更できない「自然現象」のように扱われてしまいがちで、この停滞の時期にむしろ消費「減税」をすべきだと主張する人はごく少数だった。消費減税をすれば、恒久的な経済改善効果を発揮しただろう。

 だが、実際には、1997年に橋本龍太郎内閣のときに5%へのさらなる引き上げが起きた。このときもアジア経済危機、金融危機などが生じている最中だったが、消費増税を撤回ないし引き下げるという議論もなかった。

 結局、消費増税は家計や中小企業を直撃し、日本は完全にデフレ経済に落ち込んだ。このときも「財政再建」のための「安定」財源が増税勢力のお題目だった。一種の狂信であろう。

 消費税率と消費税収の「安定」だけが成立し、経済は不安定化していく。要するに、日本国民が貧しかろうが苦境だろうが、そんなものは一切お構いなく、消費すること自体に「罪」を負わせているようなものである。

 その負担の最大の犠牲者は、国民の中でも最も所得の低い層だった。日本経済が停滞し、非正規雇用など不安定な雇用状況の人たちが増加しても、この増税が持続的に負担になり、日本の窮乏は募っていった。

 だが、それでも増税勢力は、長期停滞の極まった21世紀初めには消費増税15%を目標にしていたし、また、東日本大震災では復興増税を政治的に模索することで、それを与野党合意の消費税増税路線として結実していった。まさに「国滅びて、消費税ありき」である。

 税構造全体にも無視できない問題がある。平成になってから消費税率は上がる一方で、法人税率は引き下げ傾向にあり、所得税の最高税率や相続税率もつい最近までこれも引き下げ傾向にあった。

 消費増税導入とほぼ同じタイミングで、他の主要税の税率が引き下げトレンドに転じていく。法人税は1989年から91年にかけて段階的に大きく引き下げられ、そして今日も引き下げられている。

 しかし、法人税の引き下げによって、企業投資が活発になったり、経済の浮揚に貢献した可能性はない。なぜなら、法人税引き下げは90年代初頭から今日まで行われたが、その間に日本経済は法人税率の変化と無関係に、長期停滞と最近の停滞から一応の脱出を果たしているからだ。

 また、トランプ政権による法人税引き下げを、米国の経済好転の要因と考える人たちがいるが、筆者は極めて懐疑的な目でみている。むしろ、米経済の好調は、トランプ政権以前から続く米国の金融政策の成功の「遺産」でしかないだろう。日本も全く同じで、法人税引き下げには経済全体を好転させるかどうかは関係ない。むしろ、停滞するかそこから脱出するかは、金融政策が大きなキーを握っている。
 所得税の最高税率は、1986年まで約70%だったのが、段階的に引き下げられ、1999年には37%まで引き下げられた。最近では多少引き上げられている。ただ、累進税率を引き下げることで、所得税のもたらす経済安定効果を損なってしまった。