塚崎公義(久留米大学商学部教授)

 財務省は、軽い風邪などで診察を受ける場合には、患者の自己負担を上乗せするという見直し案をまとめたようです 。軽い病気でも気楽に診察を受ける患者が多いので、医療費が嵩んでいる、というのが理由のようです。財務省が財政再建に熱心なのはわかりますが、一工夫必要でしょう。

 風邪だとわかっていれば、受診の必要はありませんが、怖いのは「風邪のような症状の悪質な感染症」である可能性です。「風邪だと自己負担が高いから、受診しない」という患者が悪質な感染症であった場合、症状が悪化して周囲に感染させてしまう可能性があります。従って、そうした可能性のある患者は気楽に受診してもらい、風邪だとわかればそれで良いでしょう。

 風邪だとわかるまでの診察料は、自己負担を少なくして積極的に受診してもらう一方で、風邪だとわかった後の風邪薬は、自己負担率を100%にすれば良いと思います。単なる風邪なのに、市販薬より安く処方薬が手にはいる必要性はありませんから。

 問題は、風邪だとわかっている患者が受診している例も多そうだ、ということです。時間が十分にある高齢者が風邪に罹患した時、「薬局へ行って市販薬を買うよりも、国民健康保険を利用して診察を受けて処方薬を買った方が安い」と考えて受診する可能性があるからです。

 これは、ぜひともやめて欲しいです。金銭面で国民健康保険の負担が大きいですし、診療所の混雑によって多忙な現役世代の患者が「待ち時間が長いので、諦めた」ということにもなりかねないからです。

 そのためには、風邪薬の自己負担率を100%にすることが有効だと思われます。「風邪薬は自己負担率100%」という制度ができれば、風邪だとわかっている高齢者は診療所へ行かずに薬局へ直行するでしょう。診療を受けると、時間も金(自己負担分)もかかる上に、隣の患者のインフルエンザに感染してしまうリスクもありますから。そうなれば、国民健康保険は大助かりです。

 話し相手がいない孤独老人が診療所の待合室をサロンとして使っているという笑い話もありますが、もし本当にそれが心配ならば、「診療所の開設を認可する条件として、待合室のほかに談話室を設けること」と定めればよいのです(笑)。

 風邪かもしれない、という場合には、診察を受けないと風邪だとわかりませんから、診察は必要でしょう。しかし、慢性疾患の場合には、診察を受けなくても自分の問題点が分かっているわけですから、頻繁に受診する必要はないでしょう。
※画像はイメージです(ゲッティイメージズ)
※画像はイメージです(ゲッティイメージズ)
 たとえば軽度の高血圧の場合、降圧剤を処方されて飲んでいる患者の血圧は正常でしょう。そうだとすると、患者が自分で血圧を測定し、正常であることを確認すれば、診察を受ける必要は無ないはずです。つまり、降圧剤の処方箋の有効期限を「患者が異変を申し出るまで」としておけば良いのです。現実的には「1年あるいは2年に1度は受診するように」、ということで良いと思います。

 そうなれば、受診の回数が減り、本人も健康保険組合も助かるでしょう。本人が血圧を自宅で測定するのを怠って異変に気付くことができなくても、それは自業自得ということで良いでしょう。感染症と異なり、他人に迷惑をかける話ではありませんから。