高血圧以外の慢性疾患についても、基本は同じで良いと思います。感染症の場合を除き、基本は「自己責任で異変を感じた時に受診する。異変を感じなければ、1年か2年に1度受診する」で良いと思いますが、いかがでしょうか。

 受診回数を減らすほかにも、患者に安い薬を使ってもらえる工夫が必要でしょう。

 昨年のノーベル経済学賞を受賞したのは行動経済学分野でした。その研究成果の一つとして、「人間は面倒なことを嫌う」というものがあります。そんなことはノーベル賞学者に教えていただかなくても、誰でも知っていることでしょうが(笑)。

 現行の制度でも、これが利用されています。医師が処方した薬に、効き目が同じで値段が安い別の薬としてジェネリック医薬品が発売されていて、医師が「変更不可」と指示していない場合には、患者がジェネリックへの変更を薬剤師に願い出ることができるという制度になっているのです。

 「医師が変更可能と指示している場合には変更できる」という制度と比較した場合、ジェネリックの利用が増えることは明らかです。「医師が面倒だから何もしなかった」という場合には、ジェネリックを使い得るからです。これは、優れた制度です。

 しかし、どうせなら、もう一段の改善をして欲しいものです。それは、医師から「変更不可」の指示がない場合には、「患者が拒まない限り、薬剤師はジェネリックを選択しなければならない」と定めればよいのです。

 現在でも、患者が「ジェネリックを希望する」と薬剤師に伝えれば、ジェネリックを使える制度となっていて、その方が患者の自己負担も健康保険会計の負担も軽いのですが、患者がそのことを知らなかったりジェネリック薬品の存在を知らなかったり「申し出るのが面倒だ」と思ったりした場合には、ジェネリックではない高価な薬が使われるわけです。

 そうした場合でも、上記のような定めがあれば、患者はわざわざ拒むのは面倒なので何もせず、結果として自動的にジェネリック薬品が使われることになりますから、患者本人にとっても健康保険組合にとってもよいことでしょう。

 ちなみに、上記は財務省の観点から書いたものです。政治家の観点からは、医師や薬局の票が減りかねない危険な案に見えるでしょうから、採用されるか否かは何とも言えませんが(笑)。

つかさき・きみよし 久留米大学商学部教授。1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。