このように、イギリスの場合、かなり極端な例が多いわけですが、同国だけではなく欧州でも国民皆保険に対しては制度が既に崩壊していると言って不満たらたらの人が多いのです。

 日本は、クレジットカードの多重債務者のような財政状況であるのに医療費は惜しまず、どんどん使いまくっていますし、地方交付金も配りまくり、市役所や道路にお金を使いまくっています。育児支援だってはっきり言ってほとんどの欧州の国より充実しているんです。

 恐ろしいスピードで少子高齢化が進んでいる日本で役所が財布のひもを締め始めた場合、今のレベルで医療サービスの質が維持されると思っている方はどのぐらいいるでしょうか? 医療サービスの質が下がるということは、月6万円の健康保険料を払っても自分が手術を受けられるのは1年後ということが当たり前になるということです。

 病院のベッドのシーツは取り換えられず、医療スタッフは給料削減で働く人はいないので外国人だらけになります。病院食はレンジでチンするだけの冷凍食品になります。心臓の手術を受けても退院するのは翌日です。

 こういう状況にサラリーマンの皆さんが直面することが当たり前になるようになっても、

・不摂生で太りすぎた人の減量手術を優先してあげましょう
・不妊をしなかったので妊娠してしまった10代の母の出産費用は全部無料にしてあげましょう
・アルコール中毒になった人の治療は全部無料にしてあげましょう

といった寛容性を維持できるのかどうか、私には分かりません。
(ゲッティ・イメージズ)
(ゲッティ・イメージズ)
 私は社会全体の幸せや安定性というものを保つために国民皆保険というのはあった方が良いと思います。社会というのは多くの人がいてモノを売り買いし、サービスを消費するからこそ豊かになるのです。

 モノを消費するのには仕事をして稼ぐことが重要ですし、安心して仕事をするためには病気になっても手軽に治療を受けられて自己負担が少ないという仕組みは、とても重要です。ごく一部の豊かな人がレベルの高い生活を享受するアメリカ型のモデルは日本には合いませんし、社会の安定性は失われます。

 しかし、残念ながら日本にはお金がないのです。多くの人に質の高い医療サービスを提供することが難しくなっているのです。その現実をいったい何人の人が自覚し、自分は高い保険料を払っても治療が受けられないと言った立場になるのか。それをきちんと理解すべきではないのでしょうか。