私が厚生労働大臣のときも、伸び続ける医療費抑制のために、さまざまな政策を動員してきたし、今もその努力は続けられている。後発医薬品(ジェネリック医薬品)の活用、定額支払い制度の導入、自己負担分の拡大、高額療養費制度の見直しなどである。

 笑い話で言われるように、かつては「元気なときは喫茶店やサロンに行く気分で病院に行く、病気になったら寝込んで病院に行かない」「リハビリと称してマッサージ代わりに使っている」といった無駄遣いの指摘が多かったが、これも最近では相当に改善されている。私も股関節手術後にリハビリに通ったが、マッサージ代わりに使っている高齢者はほとんどいなかった。

 医療費の抑制は全国民の課題である。日本人の平均寿命は、男性が81・09歳、女性が87・26歳であるが、健康寿命は男性が72・14歳、女性が74・79歳である。

 問題は健康寿命、つまり自立した生活を送れる期間であり、これを伸ばさなければならない。そのためには、麻生氏が言うように、摂生し、適度な運動をし、生活習慣病の予防を図ることが肝要である。

 もう一つ、発想と制度の転換を提案しておきたい。今は、医療費がかかると、税金から控除される対象になる。つまり、節税のためには医療費を使ったほうが得をする気がするのである。これが控除という制度の問題であり、健康手当という形で支給する仕組みに変えるのも一つの手である。

 かつて、企業や団体が主管する健康保険組合では一定期間、例えば1年間病院の世話にならないと、ご褒美として報奨金を支払う制度があったが、それと同じ発想である。つまり、控除ではなく、皆に健康手当として、月に例えば3千円支給する。
2009年5月、新型インフルエンザ対策本部であいさつする麻生太郎首相。左は舛添要一厚生労働相(酒巻俊介撮影)
2009年5月、新型インフルエンザ対策本部であいさつする麻生太郎首相。左は舛添要一厚生労働相(酒巻俊介撮影)
 それを使って健康のための活動を積極的に行ってもらう。そして健康保険を1年間使わなかった人には、ボーナスとして1万円を支給するといった政策である。

 「控除から手当へ」という制度は、民主党政権下で子ども手当が導入されたが、民主党政権の説明の拙劣さと政権運営のまずさから、あまり評判はよくなかった。しかし、医療費控除から健康手当へという発想の転換は、麻生氏の期待にも応えるものと思っている。