なぜ、人は「社会正義の戦士」になってしまうのだろうか。

 実は、心理学的に見ると、その背景はそれほど深くない。もちろん、人が何らかの行動を起こす際には、何かしらの感情や欲求がその裏にある。具体的には、一般人には経験しづらい有名人の暮らしに嫉妬していたり、投稿には関係なく仕事など自分の社会生活や家族関係に不満を抱えていることの発散であったり、元々対象となる有名人が嫌いで、批判したり貶める機会を探っていたなど、さまざまな「思い」だろう。

 あるいはファンが賞賛していたり同意していたりすることに対する、「逆張りの精神」が発揮されているだけだったり、「発信者本人が気づいていないであろう視点に自分は気づいている」という自己顕示的意味、さらには社会正義的な言動を展開する憧れの人物の模倣(モデリング)の場合もあることと思われる。

 いずれにしても、ある種一時的で、誰しもが日常的に抱き得る心理的反応である。その意味では、極端にいえばSNSを利用している人の全てが、いつ「社会正義の戦士」になってもおかしくはないのである。

 とはいえ、炎上に関わる人々は実際にはごく一部である。

 ジャーナリストの上杉隆氏は「以前、ブログで靖国問題のことを書いたら炎上してしまいました。3日間くらい放置していると、700以上のコメントが付いていたので、IPアドレスをチェックしてみた。すると、コメントしているのはたったの4人」としている。 
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 また、IT大手ドワンゴ創業者の川上量生氏は「2ちゃんねるの管理人を長く務めていた西村博之氏によると、『2ちゃんねる上でのほとんどの炎上事件の実行犯は5人以内であり、たったひとりしかいない場合も珍しくない』らしい」と、著書『ネットが生んだ文化-誰もが表現者の時代』の中で言及している。

 過去、筆者の研究室で行った大学生を対象にした1500人規模のアンケートでも、「ネット上の炎上」を目にしたことがある者は全体の8割にも上るのに対して、過去1回以上、実際に書き込んだことがある者は、全体の約1・5%しかいないことが明らかになっている。ちなみにその約1・5%のうち、約75%が「10回以上の書き込みをしたことがある」と答えている。