2018年11月05日 12:33 公開

ジェイムズ・ギャラガー、BBCニュース健康・科学担当編集委員

米国の研究者が、インフルエンザ治療薬の開発に予想外の仲間を採用した。

この研究チームは、将来的に流行する新型も含めて、全てのインフルエンザに効く可能性のある抗体の開発にリャマを使っている。

インフルエンザのウイルスは常にその型を変形させ、人間の免疫系を攻撃する。

毎年インフルエンザの予防注射が必要なのはこのためだが、予防注射が効かないことがあるのも同じ理由による。

専門家は、インフルエンザがどんなに変異しても効くような薬を求めてきた。

ここで登場するのが、毛織物の材料として有名なリャマだ。

リャマの体は人間に比べて、極めて小さい抗体を作り出す。

抗体は免疫系の武器ともいえるもので、ウィルスの表面に突き出しているたんぱく質を束ねてしまう作用を持つ。

人間の抗体はこのたんぱく質の先端を攻撃するが、インフルエンザウィルスの場合、この部分はすでに変異してしまっていることが多い。

一方、リャマの抗体は小さい分だけ深くもぐりこみ、インフルエンザウィルスが変異させられない部分を攻撃できるという。

米カルフォリニア州のスクリプス研究所の研究チームは、リャマをさまざまな型のインフルエンザに感染させ、免疫反応を引き起こせた。

その後にリャマの血を調査して、幅広いインフルエンザを攻撃できる可能性のある抗体を見つけ出した。

研究チームはリャマから4つの抗体を採取し、それぞれの特徴を融合させた新しい抗体を作り出そうとしている。

この新たな抗体の試験は、致死量のインフルエンザウィルスを投与したマウスで行った。

研究チームの1人、イアン・ウィルソン教授はBBCのラジオ番組「Science in Action」で、「この抗体はとても効果的で、実験に使った60種のウィルスのうち無毒化しなかったのは、人間に感染しない1種類だけだった」と説明した。

「目下の目標は、季節が移り変わっても有効に作用する抗体だ。今後発現する新しい流行型からも人体を守ってくれる抗体を目指している」

この研究は科学誌「サイエンス」に掲載された。研究はまだ初期段階で、臨床試験に移る前にさらなる実験が必要だという。

インフルエンザの聖杯

研究チームは、動物実験の際に2つの方法で抗体を与えている。

1つは注射による接種、もう1つは遺伝子療法的なアプローチだ。

後者では、弱毒化させたインフルエンザウィルスの中に抗体を入れ、マウスの鼻から感染させる。

すると、鼻腔の細胞がインフルエンザを攻撃する抗体を作り始める。

リャマの抗体には、高齢者にも効果がある可能性があるという利点もある。

人間は年を取るほど免疫機能が低下していくため、毎年のインフルエンザの予防接種も効果が薄くなっていく。

しかしリャマの抗体を使った治療では、自分の免疫系を鍛える必要がない。

英ノッティンガム大学のジョナサン・ボール教授はBBCの取材に対し、「さまざまな型のウィルスに効く治療法の需要は高い。インフルエンザの聖杯ともいえる」

「需要はあるだろうが、どれくらい効果があり、製造がどれくらい容易で、どれくらいのコストがかかるのかによる」

(英語記事 Llama blood clue to beating all flu