2018年11月06日 13:39 公開

6日に行われる米中間選挙を直前に控え、同国では人種を標的にしたさまざまな疑惑が持ち上がり、近年で最も醜悪な選挙戦が展開されている。

ドナルド・トランプ米大統領は31日、2014年に保安官補2人を殺害したメキシコからの違法移民を取り上げた政治宣伝ビデオをツイートした。ビデオでは、この男性が法廷で満面の笑みを浮かべる様子が映し出され、「民主党がこの男を入国させ、在住を認めた」という、事実と異なるテロップが出る。ビデオはさらに、米国を目指してメキシコを北上する中米の人たちの「移民キャラバン」を映し出し、「民主党はほかに誰を入国させるのか」と問いかける。トランプ氏はこれをツイートし、「共和党に投票しよう!」と呼びかけた。

このビデオを使った選挙広告について、複数のメディアが放送を拒否ないしは中止している。

CNNは週末、「人種差別」だとしてこのCMの放映を拒否した。

5日には、フェイスブックやNBCに加え、トランプ氏お気に入りのフォックス・ニュースも、同氏の選挙事務所が出した30秒のCMを放送・表示を中止すると発表した。

トランプはこの選挙広告について記者に質問されると、「攻撃的なものがたくさんある。君の質問だってしょっちゅう攻撃的だ」と答えた。

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このほか、フロリダ州やジョージア州のアフリカ系候補には、「ロボコール」という自動音声電話で人種差別的な嫌がらせが相次いでいる。

6日の投票では連邦議会の主導権の行方が決まるため、トランプ氏に対する国民投票とも目されている。

トランプ政権の今後2年の政権運営は、今回改選される下院の全435議席と、上院の100議席中35議席への投票結果で決まると言っていい。

共和党のトランプ氏自身は今年改選されないが、米国全土で集会を開いている。5日にはオハイオ州、インディアナ州、ミズーリ州で演説した。

投票当日までの数週間、大統領は野党批判に加え、移民など意見の分かれる問題に対する語調を強めている。民主党の「社会主義」や、中米から米国に向かう「移民キャラバン」に含まれる犯罪者による「侵略」を警戒するよう、繰り返し呼びかけている。

トランプ氏の鋭い言葉は保守派の有権者をたきつけている一方、恐怖を扇動する戦術だと非難する声もある。

機械を使った嫌がらせ電話

フロリダ州とジョージア州でアフリカ系の知事候補を標的にした嫌がらせ電話は機械で自動化されており、すでに泥沼化している政治キャンペーンの質をさらに低めている。

そのうちの一つでは、米国の著名テレビ司会者オプラ・ウィンフリーさんが、ジョージアのステイシー・エイブラムス候補(民主党)を「ジェマイマおばさん(奴隷制時代に白人の家で働いていた黒人女性のステレオタイプ)の劣化版」など人種差別的な言葉で呼んでいたという虚偽の主張が流れた。

フロリダ州ではアンドリュー・ギラム候補が標的にされ、嫌がらせ電話ではジャングルの音やチンパンジーの鳴き声が流れた。

こうした「ロボコール」による人種差別的嫌がらせは、ソニー・パーデュー農務長官がフロリダ州での演説で中間選挙について「cotton-pickin'(綿花摘み)」のように大事だと発言したのを機に、本格化した。「cotton-pickin'」とは、米南部の奴隷制を揶揄(やゆ)する表現。

米国の選挙広告などを分析するウェズリアン・メディア・プロジェクトによると、過去10年間でこれほど攻撃的な広告がまん延した米国の選挙戦は初めてだという。

有権者の反応は?

トランプ大統領は、民主党が連邦議会で過半数を握れば違法移民と犯罪の波が押し寄せると主張し、支持者を扇動している。

また、民主党が勝利すると米国の健全な経済が破壊されると警告している。

一方、多くの民主党候補はトランプ氏との直接対決を避け、代わりに医療や経済格差といった身近な問題に重きを置いている。

民主党は、トランプ大統領の強硬的な論調によって若者や都市郊外の穏健派、少数派などの票を集められると期待している。

バラク・オバマ前大統領も選挙運動に参加し、5日にはバージニア州で候補の応援に駆けつけた。

「今回の投票では、この国の本質が問われている」と、オバマ氏は演説した。

低い投票率

米国では中間選挙の投票率は伝統的に低い。前回2014年には、第二次世界大戦後で最低の37%だった。

しかしアナリストらは、今回の選挙の投票率は大きく上がるのではないかとみている。

フロリダ大学を拠点に選挙情報を提供する「米選挙プロジェクト」によると、すでに約3430万人が投票を終えており、実際の数はもっと多いと予想されている。2014年の中間選挙の期日前投票数はわずか2750万人だった。

テキサス州では、期日前投票数が前回中間選挙の総投票数を上回った。

しかし6日には東海岸で雷雨、中西部で吹雪の予報が出ており、投票率を下げる可能性がある。

世論調査での予想は?

世論調査によると、下院では民主党が過半数獲得に必要な23議席に加え、さらに15議席を奪う可能性が高い。

一方、上院では過半数に2議席届かないと予想されている。

中間選挙では連邦議会のほか、50州中36州で知事が新たに選出される。

最初の投票締め切りは米国東部標準時で6日午後6時(日本時間7日午前8時)。

(英語記事 Race rows mire US elections homestretch