斎藤彰(ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)

 2016大統領選でトランプ候補の勝利を決定づけた無党派層の間で今、“トランプ離れ”が起きつつある。11月中間選挙を目前に控え、すでに苦戦が伝えられる議会共和党陣営は警戒を強めている。

 “buyer’s remorse”という表現がある。直訳すれば、デパートなどで衝動買いしたことを後から反省する、という意味だが、2016年大統領選後、ワシントン政界スズメの間でこの言葉がしばしばささやかれるようになってきた。トランプ氏に投票した有権者の間で自己反省の声が出てきたというのだ。

 とくに今年に入ってこうした有権者が増えつつあるといわれ、中でもめだつのが、前回大統領選挙戦の終盤でトランプ支持に動いた無党派層の意識の変化だ。

 これまでトランプ候補の勝因については、「ラストベルト(さびついた工業地帯)」の白人労働者たちの動向がカギとなった、というのが一般的な見方だった。

 しかし、専門家たちのさらに緻密な選挙分析結果によると、トランプ氏がヒラリー・クリントン民主党候補と大接戦の末に最後に勝利した決定的要因は、中西部の保守的な“プア・ホワイト”よりむしろ、民主、共和両党のいずれにも属さない無党派層の存在だったという。

 たとえば、無党派層の政治組織「無党派有権者プロジェクト(Independent Voter Project)」共同議長ダン・ハウル氏の2016年大統領選挙分析が参考になる。
※画像はイメージです(ゲッティイメージズ)
※画像はイメージです(ゲッティイメージズ)
 ハウル氏によると、民主、共和両陣営が、中西部ミシガン、ペンシルバニア、ウイスコンシン3州にしぼって実施した事前の有権者追跡調査では、両党支持票は「ほぼ互角」だった。ところが、この3州のうちとくに勝敗の決め手となったウイスコンシン、ミシガン両州では当時、選挙委員会に「無所属independent」として登録していた有権者数は実際には全体の3分の1にも達していた。

 にもかかわらず、CNNをはじめとする4大テレビや、ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズなどの主要紙のいずれもその存在にほとんど目を向けず、従って微妙な投票動向の変化を見落とした。しかし結果的に、この3分の1の有権者の多くが最後の段階でトランプ支持に回ったことが勝敗の分かれ目になったという。