熊野英生(第一生命経済研究所首席エコノミスト)

 今回の米中間選挙の結果は、トランプ大統領の足かせになるだろう。トランプ大統領は、イランとの核合意離脱、米大使館のエルサレム移転、中距離核戦力(INF)条約の破棄といった驚くべき政策を次々に繰り出してきた。

 2016年の大統領選挙と同様に、中間選挙も蓋を開けてみなければ分からないとされていた。隠れトランプ支持者が多くいるかもしれないという神通力が私たちを疑心暗鬼に陥れたものの、結局、中間選挙では効力を上げなかった。トランプ大統領はお灸を据えられた格好である。

 通念として、マーケットには共和党の勝利が追い風という見方があるが、トランプ大統領に対しては、下院で民主党が多数派になっている位の方が「自制が効く」というプラス効果があるのではないだろうか。

 中間選挙は、下院で民主党が過半数を制した。民主党は、2020年の大統領選挙に向けて、トランプ大統領の再選を阻止するために全力を尽くすだろう。トランプ大統領は法案を通しにくくなり、再選は不利になる。

 このこと自体は悪いことではないが、経済運営にはマイナス効果が及ぶ。2018年、トランプ大統領は「トランプ減税」という痛み止めを打ちながら、米中貿易戦争の摩擦を甘受してきた。その結果、今でも「関税率引き上げは実体経済にほとんど影響ない」と言い切る人も少なくない。

 しかし、トランプ減税の効果は、2019年のどこかで弱まってくるだろうから、相対的に関税率引き上げの悪影響が強まることが予想される。トランプ大統領は2020年の大統領選挙に向けて、中間層への10%の所得税減税やインフラ投資を実行する法案を議会に提出すると見込まれる。ところが、民主党はそれを簡単には通させない。こうした動きが起これば、経済にはマイナスである。
共和党候補への支持を訴えるトランプ大統領=2018年11月5日、アメリカオハイオ州(加納宏幸撮影)
共和党候補への支持を訴えるトランプ大統領=2018年11月5日、アメリカオハイオ州(加納宏幸撮影)
 2019年は、アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)の利上げも予想される。現在は、景気が良い前提で利上げを追加しているが、関税率引き上げの悪影響は少し時間をかけて現れる可能性もある。もちろん、こうした影響は、日米株価を下落させる要因である。

 中間選挙を前に、トランプ大統領が11月末にアルゼンチンで開かれる20カ国・地域首脳会合(G20)で習近平主席と会談し、貿易戦争の終結に向けた合意をするという観測があった。株価はこの観測に反応して、10月の下落から急反発した。

 しかし、この観測は、株価下落に何とかテコ入れしたいトランプ大統領が流した情報だろう。中間選挙を意識した情報操作であると考えられ、11月末のG20が近づくと期待感がはげ落ちて株価を押し下げる要因になりそうだ。