山田順(ジャーナリスト)

 11月6日、「中間選挙」(midterm election)の日の朝、ニューヨーク市内は霧が立ち込め、小雨が降っていた。この雨は、午後になると雨脚を強くし、結局、投票所が閉まる午後6時までやまなかった。そのせいか、ニューヨーク州の投票率はそれほど上がらなかった。

 しかし、今回の中間選挙は、フロリダ大学を拠点に選挙情報を提供する「米選挙プロジェクト」によると、前回2014年の期日前投票の投票者数約2750万人を1000万人以上も上回って約4000万人に達していた。つまり、これまで以上に注目を集めていたのである。

 これまでの中間選挙では、投票率が4割を超えたことはほとんどない。それほど関心が薄いのだ。しかし、今回は違った。これは、トランプ大統領がいかに米国を、いや世界中を騒がせてきたのか、その結果とも言えるだろう。

 そのせいか、朝から主要メディアは「アメリカの運命が決まる」「トランプの今後が決まる」と騒ぎ立ていた。しかし、ここニューヨークは、静かなものだった。ニューヨーク州は民主党の鉄板の牙城で、無風もいいところだからだ。

 「トランプの出身地であり、マンハッタンのど真ん中にはトランプタワーが建っているではないか」などと言っても、そんなことは選挙には全く関係ない。ここの人々は、ほぼ誰もトランプなど相手にしていない。

 今回、ニューヨーク州の上院議員選挙は、2人の議員のうち、チャック・シューマー議員(民主党)は非改選で、改選されるのはカーステン・ギリブランド議員(民主党)だったが、予想通りに圧勝した。何といっても、彼女は民主党の女性議員の中ではエース的な存在である。本人は出馬を否定しているが、2020年の大統領候補の一人と目されている。

 トランプが「フェイクニュース」と呼ぶメディア、CNNは出口調査で、議会にもっと女性議員を増やすべきかどうかという質問を行ったが、約8割の人間が「重要だ」と回答していた。そんな中、ギリブランド議員は、トランプが「ポカホンタス(米先住民女性の名前)」と呼び、既に2020年の大統領選に出馬を表明しているエリザベス・ウォーレン議員(マサチューセッツ州)と並んで、今後の民主党の女性議員を引っ張っていく存在である。

 ただし、ギリブランド議員と争った共和党候補も、チェリー・ファーレーという、夫が弁護士で自身がエクイティ投資家という才女だった。このような図式を見ていると、トランプ以後は、米国初の女性大統領が誕生するのは間違いないのでは、と思う。

 それにしても、米国の選挙を見て思うのは、これが「民主主義大国」の選挙なのかということだ。大統領選挙は投票率が6割に達するが、中間選挙は前記したように4割がやっとだ。つまり、6割の人間が選挙に行かない。これは、日本の国政選挙の比ではなく、世界でも下から数えた方がいいというひどさだ。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 よって、日本のメディアが得意げに解説する「米国民の意思」=「民意」などというものは、選挙にはあまり反映されない。

 なぜ投票率が低いのか。選挙民が「平気で嘘をつく」トランプに怒りを感じていないからではない。投票日が火曜日だからだ。これでは多くの人間、特に時間給を稼がなければならない低所得層は選挙になど行けない。