中岡望(東洋英和女学院大客員教授、ジャーナリスト)

 11月6日にアメリカの中間選挙が行われた。任期2年の下院議員435議席と、任期6年の上院議員100議席のうち3分の1の35議席が改選された。通常、中間選挙は大統領選挙と同時に行われる本選挙に比べると関心が低く、投票率も低いのが特徴である。また、もう一つの特徴は、与党が議席を失うケースが多いことだ。

 ただ、今回の中間選挙は従来とは異なった様相を見せていた。多くの論者やメディアはこぞって「アメリカの選挙史上、最も重要な選挙」であると指摘していた。すなわち、単なる議員の改選にとどまらず、トランプ大統領の「信任投票」の意味合いも含まれていたからだ。世論調査でも、60%以上が、トランプ大統領が投票決定の要因になると答えている。

 トランプ大統領の2年間の政策はアメリカの政治や社会を大きく変えただけでなく、戦後、アメリカが作り上げてきたリベラルな国際秩序も逆転させるものであった。トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」や「アメリカを再び偉大にする」、「雇用を取り戻す」というスローガンを訴え、中西部や南部の白人労働者、妊娠中絶や同性婚に反対する立場をとることで「エヴァンジェリカル」と呼ばれるキリスト教原理主義者などの支持を得てきた。

 また、公然と白人至上主義やネオナチを支持し、ナショナリズムを主張するだけでなく、人種差別や女性差別的な発言を繰り返し、物議を醸していた。人種的多様化にも否定的で、不法移民を犯罪者扱いするなど、従来のリベラルなアメリカ社会を根底から覆す政策を取ってきた。

 同時に共和党は大統領選で勝つためにトランプ大統領と「悪魔の取引」(『民主主義の死に方』で著者が使った表現)をした。伝統的な保守主義者を共和党から排除したことで、穏健派は口を閉ざし、共和党はトランプ大統領の言いなりになる「トランプの党」へと変貌していった。そしてトランプ大統領は反対者やメディアを口汚く罵(ののし)り、極めて権威的な政治体制を作り上げてきた。

 今回の中間選挙でも、劣勢が予想される共和党候補を支援するため、積極的に支援活動を展開してきた。トランプ大統領が取った戦略は、移民の増加で白人社会が消滅すると強調し、白人有権者に恐怖感をあおった。移民に対する怒りを植え付け、国民を分裂させることで、「トランプ連合」と呼ばれる支持層を結束させようとした。

 『ニューヨーク・タイムズ』は、この戦略を「南北戦争以降、どの大統領もやったことのないような方法でアメリカ社会に人種的な分裂を引き起こし、今回の中間選挙は最も両極に分裂した」(11月5日)と分析している。

 中間選挙は、有権者がトランプ大統領の政策や理念にどのような判断を下すかが最大の焦点となっていた。選挙前の調査では、下院は民主党が過半数を占めるが、上院は共和党が過半数を維持するというのが大方の予想であった。
米オハイオ州のクリーブランドの集会で、父のトランプ大統領(右)の隣で演説するイバンカ大統領補佐官=2018年11月(ロイター=共同)
米オハイオ州のクリーブランドの集会で、父のトランプ大統領(右)の隣で演説するイバンカ大統領補佐官=2018年11月(ロイター=共同)
 まだ議席の最終確定はしていないが、予想通り民主党が過半数の218議席を上回った。ただ、民主党が圧倒的勝利を収めたとはいえない。オバマ政権が誕生して2年後の2010年の中間選挙では民主党は63議席を失う大敗北を喫している。それから見れば、今回の議席喪失は30議席程度で想定を上回っているが、共和党にとっては大敗北とはいえない状況である。

 上院は、現時点では共和党は3議席増やして、非改選を含め51議席を確保している。民主党は3議席失い、非改選を含め46議席にとどまっている。未確定の選挙区もあり、民主党がさらに議席を失う可能性も残っている。