NHKの「貯金箱」

 NHKエンタープライズの資産状況を見てみよう。NHKエンタープライズは260億円の資産を持ち、158億円もの純資産(資産-債務)を持つ、巨大かつ健全な企業である。本来、この純資産はNHKの利益として計上されるべきもので、受信料値下げに反映すべきものである。これがNHKの子会社であるNHKエンタープライズに蓄積され、NHK本体に反映されていない情況となっている。先述のように、非営利であれば非営利として活動し、営利であれば一般の民間企業と同様の営業形態を取るべきである。いいとこ取りをしているのがNHKの実体だといわざるをえない。



独立性問題

 公共放送としてのNHKの意義に「放送の独立性」がある。営利ではなく、どこにも属さないことでその放送の独立性を守るのが建前だ。では、これができているのかといえば、甚だ疑問となる。昨年七月にNHKエンタープライズに吸収されたが、かつて総合ビジョンという映像制作会社が存在した。同社はNHKと大手広告代理店電通が折半で設立した会社で、完全な民間企業である。周知のように電通は日本のメディア全体を仕切る最大手の広告代理店であり、CMなどの制作会社でもある。また、企業のリスクマネジメントも請け負っており、トラブルなどの火消し(クライシスコミュケーション)を行ってもいる。

 このような会社と、子会社を通じてとは言え、NHKが合弁会社を保有していたことこそが、その実体を物語っているといえよう。現在は不明だが、かつてNHKの番組内広告の一部を電通が請け負い、電通子会社の電通テックが制作していた事実もある。

メディア・スクラム


 ここで、NHK問題への理解を深めるため、日本のメディア全体の問題について述べておきたい。

 日本のメディア構造は、新聞社とテレビ、ラジオがひとつの資本でまとまり、個別のメディアグループを形成している。そして、このメディアグループが地方紙や地方企業などが出資する地方局へ番組を配信する構造となっている。これがマスメディアの縦糸にあたるものだ。メディア各社は記者クラブに属し、同じ情報下のもとで連携して動いている部分も大きい。だから、同じ情報が様々なメディアから同時発信されるわけである。そして、放送収入を寡占化した広告代理店(電通、博報堂=通称デンパク)に依存している。これがメディアの横糸となる。

 代理店問題に関しては、直接的にNHKに責任があるわけではないが、国際的に見て日本の代理店システムは、非常に大きな欠陥を抱えているとしかいいようがない。海外では、基本的に代理店は一業種一社制となっており、同一の産業で代理店がいくつのも企業を掛け持ちすることはない。例えばトヨタの広告を引き受けた場合、ホンダや日産などのCMは受けられない。しかし、日本においてはこのルールが形成されておらず、「デンパク」などが大手企業の広告を一手に引き受けている。代理店側はチャイニーズ・ウォール(情報隔壁)を作り、企業情報を守っていると主張するが、現実にどこまでそれができているかといえば甚だ疑問だ。本来、これは利益相反として批判の対象となるべきものなのだが、報道機関たるメディアはこれを一切批判しない。

 NHKが独立性を訴えるのであれば、このような広告代理店や記者クラブなどから一定の距離を置くべきだが、現状ではまったく出来ていない。またNHKと民放の間で起用する出演者や評論家など文化人も共有されており、その意味においても独立した構造とはいえない。