NHK批判しない他メディア


 本来、NHK以外のメディアは民業を圧迫しているNHKを批判しなくてはおかしい。NHKは非営利を盾に免税が許されており、強制的な収入獲得手段も有している。このように優遇された法人と民間が同じ土俵で戦っているのである。さらにNHKは、子会社を通じてとはいえ版権ビジネスやイベント、インターネット通販まで手を出し、独占的な地位を利用し完全な営利事業を行っている。民間マスメディアにとって、それはライバルであり、自社の利益を奪う許せない存在であるはずなのに、NHKへの批判が民間メディアの俎上に上がることはほとんどない。これこそが最大の問題であり、癌であるといえる。本来、メディアは相互監視の中で健全性を保たれる。日本ではこれが正常に機能していないのだ。

審査機能の不全


 では、NHKはどのように運営されているか、どこに問題があるかを考えてみたい。NHKは株式会社ではない。そのため、民間企業のような取締役会や株主総会が存在しない。しかし、それに代る存在として経営委員会がある。経営委員は国会の承認の下、内閣総理大臣が任命する。NHKの予算は総務大臣に提出され、総務大臣の意見を付けられた形で国会の承認を得る。私にはどちらもまともに機能しているとは思えない。

 実は、NHKには株主総会に代るものとして全国各地で開かれる「視聴者の皆様と語る会」というものが存在する。NHKにはこの会を通じて視聴者の意見を聴取し、それを経営に反映させる義務がある。この会には必ず経営委員が参加し、議事録を作成する仕組みになっているのだが、この会の存在は多くの国民に認知されているとはいいがたい。

 予算に関しても、国会議員には膨大な内容を個別に精査できるだけの時間も会計などの専門知識もない。また、議員の多くがNHKというメディアに批判されることを恐れているのも事実だと思われる。これまで、多くの議員がメディアに潰されてきた。政治もメディアにより動かされている。NHKを批判することで、自らに批判の矢が飛んでくることを怖れる議員も多く、国会議員は積極的にNHK批判が出来ない。

 このような情況の中で、NHKはどんどん肥大化し、巨大帝国を作り上げてきた。しかし、現在、NHKを含むメディア全体に大きな変化が現れ始めている。それは第四の権力であるマスメディアを監視するインターネットという第五の権力の誕生である。

 実は、マスメディアが持つ最大の権力は、報じることではなく「報じないこと」なのである。これまで、マスメディアが報じなければ、どんなに大きな問題であっても国民に認識されることもなく、議論の対象になることは稀であったが、インターネットの普及により、この構造は大きく壊れつつある。

 その象徴が、みのもんた氏の降板問題であったと私は考える。先日、みの氏は、次男の刑事事件を理由に番組を降板した。この問題とほぼ同時進行の形で本人のセクハラ・パワハラ疑惑も持ち上がっていたのだが、この疑惑は、インターネット掲示板への視聴者の書き込みやツイッターでのツィートで発覚し、その証拠動画とともにインターネットで拡散された。いくつかのインターネットメディアがこれを報じ、一部の夕刊紙も報じた。TBSが、みの氏の降板を決めた理由には、このセクハラ・パワハラ問題も大きな判断基準となったと推測される。

 なぜなら、この件に関してコンプライアンス室が動いたとされているからだ。基本的に本人に帰さない理由でコンプライアンス室が動くことはない。今回の案件は、罪を犯したのは成人した子であり、親に責任を求めるのには無理がある。子の犯罪を理由に親の辞職や降板を企業側が強制すれば、人権侵害にもなりかねない。逆にセクハラやパワハラの疑惑が生じた場合、適切な対処をしなければ企業も処罰の対象となる。だから、みの氏の降板には本人のセクハラ・パワハラ疑惑が大きな理由となったと考えられるのである。

 いずれにせよ、インターネットが関与する形で「テレビの顔」であったみの氏が朝の番組から姿を消したことは事実であり、これは時代の大きな変化を意味するものとなるだろう。

 政治家もインターネットを通じて積極的な情報発信を始めている。これには、「切り貼りによる印象報道や捏造報道を抑制する事」と「報じてもらえない事実を直接伝えることが出来る」という二つの効果がある。事実上、インターネットはマスメディアによる情報独占とメディア・スクラム構造を崩壊させ始めているのである。

 NHK問題を解決するには、多くの国民がNHKの事実を知り、そこに問題意識を持ち、NHKの「視聴者の皆様と語る会」に積極的に参加し、経営委員や政治家などに対して改善を求め続けることにある。他人任せにせず、自らが動くことでメディアも社会も大きく変化する。


 わたなべ・てつや 1969年生まれ。日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。大手掲示板での欧米経済、韓国経済などの評論が話題となり、2009年『本当にヤバイ!欧州経済』(彩図社)を出版、欧州危機を警告しベストセラーになる。内外の経済・政治情勢のリサーチや分析に定評があり、さまざまな政策立案の支援から、雑誌の企画・監修まで幅広く活動を行っている。


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