2018年11月09日 12:35 公開

米カリフォルニア州ロサンゼルス郊外のサウザンドオークスで7日午後11時20分ごろ(日本時間8日午後4時20分ごろ)、飲食店で銃乱射事件があり、現場に急行した警官を含む12人が犠牲になった。このほか、容疑者も現場で死亡しているのが発見された。

現場となったボーダーライン・バー・アンド・グリルには、事件当時少なくとも200人がいた。この日は学生のラインダンス・パーティーが開かれていた。

イアン・デイビッド・ロング容疑者(28)は元海兵隊員で、精神衛生上の問題を抱えていた。

調べによると、ロング容疑者は以前、自宅で「理性を欠いた」行動をしていたところを発見されたが、警察の精神医療専門家は今年の初めに問題がないと判断していた。

警察によると、ロング容疑者は黒い服に身を包み、入り口の警備係を撃った後にバーに押し入った。

この日は学生向けのカントリーミュージックのパーティーが行われていたが、目撃者によると容疑者は発煙弾を投げた後に銃を乱射した。

犯行に使われたのは45口径のグロック製自動拳銃で、カリフォルニア州では違法とされている装弾数を増やすエクステンデッドマガジン(弾倉)が装着されていた。

合計何発の銃弾が撃たれたか、犯人が途中で銃弾を込め直したかなどはまだ分かっていないと、警察は話している。


テイラー・ウィットラーさんはこの日、バーで友人の21歳の誕生日を祝っていた。

「ダンスフロアにいたら銃声が聞こえた。振り返ったら突然みんなが『伏せろ!』と叫んだ」

「すごいパニックで、みんなが逃げ出そうとして踏みつけられた。床に置き去りになっていたけど、誰かが後ろから私をつかんで引きずり出してくれた」

現場にいた人々は椅子で窓ガラスを割って逃げ出したり、バーのトイレに隠れたりしたという。

少なくとも10人がけがをしており、このほかに地元の病院に自ら駆け込んだ人もいるという。

生存者のニコラス・チャンピオンさんは、昨年ラスベガスのカントリー音楽ンサートで58人が犠牲になった銃乱射事件にも遭遇していた。この事件は現代の米国で最悪の銃乱射事件とされる。

チャンピオンさんはCBSニュースに対し、「私たちは大家族ですが、不幸にも2度も銃撃事件にあった」と話した。

ボーダーライン・バー・アンド・グリルはカリフォルニア・ルーセラン大学、ペパーダイン大学、ムーアパーク・コレッジといった大学に近く、学生に人気のバーだった。

警察の発表

ベンチュラ郡のジェフ・ディーン保安官は、現場となったバー内部は「惨状」で、「あちこち血まみれだった」と説明した。

ディーン保安官によると、バーからの通報から3分後には警官が現場に到着した。

ロン・ヘラス巡査部長は地元のハイウェー・パトロール隊員と共に現場に立ち入ろうとした際に数カ所を銃で撃たれた。ヘラス巡査部長はその後、病院で亡くなった。


一児の父でもあるヘラス巡査部長は勤続29年で、銃火器の教官の資格も持っていた。来年にも退官予定だったという。

ディーン保安官はヘラス巡査部長について「突然のことで、悲しみに暮れている」と語った。

「彼は英雄として亡くなった。他の人の命を助けようとして現場に向かった」

ディーン保安官はその上で、「その地域がどれだけ安全だろうと、犯罪発生率が低かろうと、関係ない。まともな考え方をしない人がどこにでもいる。場所がどこだろうと、こういう連中は恐ろしい行動をとる」と警告した。

「理解などできない。理屈の通らないことから理屈を導き出すなど無理だ」

ドナルド・トランプ大統領はホワイトハウスをはじめ、政府と軍関係の庁舎で半旗を掲げ、「おそろしい」攻撃の犠牲者を追悼するよう指示した。

またツイッターで「カリフォルニアで起きた恐ろしい銃撃事件について報告を受けた。警察や救急隊員、FBIが現場にいる。これまでに13人が亡くなったと報告されている。銃撃犯も死んだが、最初にバーに駆けつけた警官もなくなった。警察がすばらしい勇気を示した。カリフォルニアのハイウェー・パトロールは3分以内に現場に駆けつけたが、バーに突入した警官は何度も撃たれた。巡査部長は病院で亡くなった。全ての犠牲者とその家族に神の祝福がありますように。警察にも感謝を」と述べた。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1060511925883285504


https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1060515116700045312


海兵隊から数々の授与

警察はここ数年、ロング容疑者とは何度か軽微な内容の事案で接触があったと説明した。今年4月には騒動の通報を受けて自宅を訪問したという。

聴取の際のロング容疑者は「どこか短気で、理性に欠けていた」と保安官は説明した。

警察の危機介入チームがロング容疑者と面談した結果、精神医療施設への強制収容は必要ないと判断した。

ディーン保安官によると、精神医療の専門家はロング容疑者が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患っているとみていたという。

米海兵隊は声明で、ロング容疑者が2008~2013年にかけて機関銃の射撃兵として務め、伍長まで昇級していたことを認めた。

ロング容疑者は2010年11月~2011年6月にかけてアフガニスタンに従軍し、善行章やアフガニスタン戦役章、対テロ戦争従軍記章を授与されている。


心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは?

  • 許容量を超える恐怖や命の危機にさらされるといった心的外傷(トラウマ)を負う体験をすると、PTSDを起こす可能性がある
  • 通常は原因体験から数週間後にPTSDの症状が表れることが多いが、もっと後に発症する場合もある
  • トラウマ体験の後に悲しみに襲われたり、不安やゆううつ、罪悪感、怒りなどを感じることがある
  • 体験のフラッシュバックや悪夢に悩まされることもある
  • PTSDを患うと、物事を常に警戒するようになることがある
  • 身体的には痛みや下痢、動悸、頭痛、パニックや恐怖、うつといった症状が出る場合がある
  • アルコールの過剰摂取や、薬物使用に走る場合もある。使用薬物には痛み止め薬も含まれる

(出典:英精神医学学会)


銃暴力アーカイブによると、米国では今年すでに1万2000人以上が銃火器で殺害され、うち約3000人が18歳以下だった。

これには年間2万2000人と推計される銃火器による自殺は含まれていない。

直近2週間に限っても、フロリダ州のヨガスタジオで男が2人を殺害したほか、ピッツバーグのシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)の銃乱射事件で11人が亡くなった



<解説>終わりの見えない悪夢 ――ジェイムズ・クック、BBCニュース(サウザンドオークス)

米国の悪夢が終わらない。

数え切れないほどの学校、教会、大学、そして街全体が、大量殺人事件の代名詞となっている。リストはラスベガス、オーランド、バージニア工科大学、サンディーフック、サザランドスプリングス、パークランドと続き、今度はサウザンドオークスが加わった。

現場となったボーダーライン・バー・アンド・グリルの生存者は暗闇の中で互いに抱き合い、温かく和気あいあいとしていたバーで着ていた服でこごえていた。多くは常連客で、カントリーミュージックとダンスを楽しみにバーを訪れていた。

ショックと絶望が、小さく固まった友人グループの間に漂っている。しかしそこには、乱射事件に驚いたという感情は見られない。


(英語記事 Ex-Marine suspect in California bar attack