村田のボクシングスタイルは非常にシンプルだ。ガードを固めてプレッシャーをかけ続けながら強いパンチを打ち込む。余計なパンチはあまり打たず、一撃で相手を仕留める。パンチ力と圧力があるからこそできるスタイルだ。

 パンチの強さは世界のボクサーにも引けを取らない。ガードも高く、プロでダウンの経験もないという打たれ強さも兼ね備えている。ただ、前回のブラント戦やアッサン・エンダム戦でもそうだったが、強いパンチを打ち込もうとする余り、ジャブや手数が減ってしまうのが難点である。

 次に階級の視点からみてみよう。そもそも、日本を含むアジアのボクシングは、軽量級を主戦場としている。先にも記したが、日本の世界チャンピオンは約90人に上る。だが、ウエルター級以上の重量級の世界チャンピオンは村田を含めて3人(輪島功一と竹原慎二)しかいない。体格の面からもアジアの選手は軽量級が多く、村田のようにミドル級でチャンピオンになった例はアジアを見渡しても非常に少ない。

 また、ミドル級は競合が多く世界的な層も厚い。世界的スター、フロイド・メイウェザーやマニー・パッキャオは、村田の一つ下のスーパーウエルター級で活躍していた。そのため、その前後の階級は強い選手が多い。

 前回の試合では負けてしまったが、カザフスタンの英雄、ゲンナジー・ゴロフキンもいるし、ゴロフキンに勝ったメキシコのサウル・アルバレスもいる。他にも、アメリカ出身のジャーメル・チャーロやカナダ出身のデイビッド・レミューなど、名実備えた選手が多い階級である。

 こうした重量級の迫力とスピード、テクニックを兼ね備えた選手が多いだけにボクシングの本場、アメリカでも人気の階級だ。スピードに加え、パンチ力もテクニックもある、三拍子そろった選手がいくらでもいる。非常にレベルの高い階級と言える。

 そして、ファイトマネーも桁(けた)違いだ。日本でのタイトル戦とは比べ物にならない。海外放送の放映権関係などの影響も受けてファイトマネーも跳ね上がる 。

 そんな厳しい階級で戦い続けてきた村田だが、ベルトを失い、今後どうするのか。やはり人気のある階級だけに、その分チャンスがめぐって来るのも難しい。村田もブラントに負けたことで、ビッグマッチへのチャンスが遠のいたのは確実である。
WBA世界ミドル級戦の11回、ロブ・ブラント(右)のパンチを浴びる村田諒太=2018年10月、米ネバダ州ラスベガス(共同)
WBA世界ミドル級戦の11回、ロブ・ブラント(右)のパンチを浴びる村田諒太=2018年10月、米ネバダ州ラスベガス(共同)
 とはいえ、勝てばゴロフキンと東京ドームでの試合の話もあっただけに、今は村田本人が一番落胆しているだろう。本人も語っていたが、すぐには決められないとの言葉は、周囲の環境が普通の選手と比べてあまりに違うからである。

 今後の動向に注目が集まるが、村田をよく知る筆者としては、今はゆっくり休ませてあげてほしいと強く感じる。世界戦はそれに臨む本人しか分からない大きなプレッシャーの連続だ。自分の人生を賭けてその一戦に向かっていくだけに、進退を決めるのは難しい。体と気持ちを休めることで、見えてくることもあるだろう。

 ただ、村田のボクシング界における影響力はあまりに大きい。 筆者もこのまま終わってほしくないし、村田の実力ならまだやれると強く思う。時間をかけ、悔いの残らない決断をしてもらいたい。