このようにみると、人手不足、低賃金を解消する有力な方法が労働生産性の引き上げで、それを実現するために必要なのは、民間企業の設備投資拡大であり、研究開発投資の拡大となります。産業ロボットや人工知能(AI)などを取り込んだ設備投資の拡大によって、省力化が進み、生産性が上がれば、従業員の給与引き上げも可能になり、人手不足と低賃金解決の「一石二鳥」です。

 その点、ただ設備を増やすだけでは、いずれ設備過剰となってストック調整を余儀なくされることがあるので、新技術につながるような研究開発投資が重要です。日本は主要国に比べてこの分野での政府支援が遅れています。官民協力して研究開発を進め、日本のアップル、グーグル誕生のタネをまきたいものです。

 このように、人手不足の原因として大きいのは、人口の減少というよりも企業の生産性努力が後退して効率が悪くなっていることが大きく、ここに対策を打つのが先決で、外国人労働力に頼るのは最後の最後で、限界的な対応策としてみる必要があります。

 欧米では移民難民問題で国が割れるなど、これが大きな問題になり、ドイツなど、政権を揺るがす状態にある国もあります。米国でも中米からの難民キャラバンに対して、軍隊を用意してまで入国を阻止しようとするトランプ政権のやり方に賛否が分かれています。

 日本は地理的な特性もあって、ここまでは移民難民の問題はほとんど経験がなく、難民受け入れも主要国の中では非常に遅れているとの批判もあります。それだけここまでは移民難民問題に慎重に対処してきた日本が、人手不足のために、こうした問題をスキップして外国人労働力の受け入れに急旋回しています。

 それも、熟練技能労働者のみならず、上司の指示に従って仕事ができる程度の未熟練労働も受け入れる方向で、最終的にどれくらいの規模になるのか、当局も十分把握していないまま、拙速で話が進んでいます。人件費の安い非正規雇用の次は、やはり人件費の安い外国人の単純労働力を、という安易な動きとも言えなくもありません。その結果として、移民を受け入れる判断をしたのと変わらなくなります。

 多民族同居に慣れていない国柄であるため、外国人は新大久保や群馬などに「外国人街」を作りがちで、必ずしも日本社会に十分溶け込んではいません。

 そんな中で、労働力として大規模な外国人を受け入れると、それが3年であれ5年であれ、家族も含めると大規模な外国人が日本社会に突然暮らすようになりますが、その社会インフラは整っていません。5年過ぎたら追い返すのか、社会保障は日本人と同様に扱うのか、その負担はどうするのか。まずは日本人が移民難民の受け入れをどう考えているのかも把握する必要があります。
※画像は本文と関係ありません(GettyImages)
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 その上で受け入れ態勢が整うまでは、外国人労働力の受け入れは十分慎重に、徐々に進める必要があります。受け入れ態勢が整わないまま外国人を大量に受け入れ、彼らに不自由、不便な思いをさせ、社会と軋轢(あつれき)を起こすようなら、国際社会から日本の姿勢が非難され、国際的な信用を失います。

 人手不足問題に対しては、まず企業の研究開発、技術開発、設備投資による生産性向上努力に注力し、その間安心して子育て就労ができる体制を整え、結婚、出産しやすい環境を作るなど少子化に歯止めをかけるのが先で、その間に外国人労働力、移民受け入れ態勢を法体系も含めて整備する必要があります。それでも必要なら外国人労働に助けてもらう、というのが筋ではないでしょうか。