とはいえ、人手不足の職種には、やはりそうであるだけの理由がある。仕事が複雑多岐で覚えにくい、体力的について行けない、仕事をする上で何らかの資格が必要―などといったものだ。

 このようなギャップをなくすための工夫が必要である。業務の簡素化やIT化を進めることで、非熟練の人材でも新たに入りやすい職場の形成が求められよう。高負担の業務を見直してワークシェアリング(仕事の分割・分かち合い)を推進することも必要である。

 もし、会社内で仕事や負担が集中してしまっている人がいたら、その仕事の中身を分析して、他の人で代われそうな部分を抽出し分業を推進するべきだ。会社の中心としてバリバリ働くのは難しくても、その手伝いだったらできるという労働者は多い。こういった分業の工夫は過重労働の防止になるし、高齢労働者などの活躍の場を増やす上でも有意義である。

 また、職場内でのスキルアップ・キャリアアップの機会を増やし、事業者自らが求めているような人材を育成することも期待されよう。非正規労働者を正規に転換するのは、立派な「人手不足対策」である。そこで、平成24年に改正された労働契約法では「5年無期転換ルール」が定められた。これは、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、労働者側からの申し込みにより、無期雇用に転換できるというものである。
 
 また、派遣社員の雇用を安定させるために平成27年に労働者派遣法が改正され、いわゆる「3年ルール」が定められた。派遣社員は同一部署で働く期間を一律「3年」と定められ、それ以降は派遣元の派遣会社は派遣先に対してその派遣社員の直接雇用を依頼するなど、派遣社員の雇用を安定化させる措置を採らなければならない。

 そもそもこれらの有期雇用の無期転換や、派遣社員の直接雇用というのは、スキルアップや人材育成の実現を意図して導入された制度である。非正規であっても5年や3年という長期間にわたり同じ仕事を続けていたのであれば、きっと仕事の現場において不可欠な存在になっているだろう。だからこそ、その実態と整合するように無期雇用・直接雇用に転換してもらおうということで、こういう制度を作ったのである。

 しかし残念なことに、実際には規制逃れの事例が少なくない。無期雇用や直接雇用を期待できるかと思いきや、期限を前に契約終了を言い渡される人が少なくない。人手不足が叫ばれるこの世の中において再び「派遣切り」ともいえるような状況が起こっているとは、いかにも不条理なことである。
厳しい雇用環境の中、ハローワークで職を探す求職者=2009年2月、大阪市港区のハローワーク大阪西(桐山弘太撮影))
厳しい雇用環境の中、ハローワークで職を探す求職者=2009年2月、大阪市港区のハローワーク大阪西(桐山弘太撮影))
 有期契約社員や派遣社員の代わりはいくらでもいると思われているのかもしれないが、一つの職場で経験を積み技能を蓄積した従業員の代えはそう簡単に効くものではないし、何でもやってくれる優秀な正社員はそんなに簡単に採用できない。

 安易な有期の雇い止めや派遣切りに走る前に、一度立ち止まって「この人材は、本当は会社に必要なのではないか」と冷静に考える姿勢を求めたいところである。