田岡春幸(労働問題コンサルタント、元厚生労働官僚)

 厚生労働省によると、2018年9月の有効求人倍率は1・64倍となった。1974年1月(1・64倍)以来の高水準で、人手不足感が強い状況が続いている。一方、今まで働いていなかった人の就労も進み、総務省が同日発表した9月の完全失業率は改善し2・3%だった。要は就職しやすい売り手市場になっているのだ。

 ただ、これに伴い、企業側もしっかり調べず安易に人材を採用し、かえって採用基準が下がる恐れもある。いわゆる「ブラック社員」のことだが、最近はこうした問題社員を採用するケースが増えている。言うまでもなく、これは企業にとって大きなリスクであり、人手不足になっても安易な採用は控えるべきである。

 採用できる企業はまだいいが、近年、人手不足に伴う倒産も増加している。人手不足は残業増加を生み、企業そのものも「ブラック企業」化する。実際、現状のブラック企業は、人手不足が一因になっていることもある。これも企業評価にかかわり、日本経済停滞の一因になり得る。

 こうした現状の解決策として、今臨時国会で議論されているのが、外国人労働者の受け入れ拡大である。外国人労働者数は、2017年10月時点の厚労省の調査によると、127万人である。

 「出入国管理及び難民認定法」(入管法)改正と「技能実習法」改正による人手不足が深刻な建設や農業、介護など14業種での受け入れが検討されている。これらの業界の特徴は、劣悪な労働条件の企業が多いとされる。

 ここで改正案を確認しておこう。改正案は、就労目的の在留資格「特定技能」を2段階で設ける。一定の技能が必要な「特定技能1号」は、最長5年の技能実習を終了するか、技能試験と日本語試験の合格を条件とする。在留期間は通算5年で家族の帯同は認めない。
※画像はイメージ(ゲッティ・イメージズ)
※画像はイメージ(ゲッティ・イメージズ)
 さらに高度な試験に合格し、熟練の技術を持つ外国人は「特定技能2号」の資格を得られる。配偶者と子供の帯同を認め、更新時の審査など条件を満たせば永住への道も開ける。両資格とも同じ分野であれば転職も可能となる。

 受け入れは、日本人と同等以上の報酬を支払うなど雇用契約で一定の基準を満たすことを条件とする。直接雇用が原則だが、分野によっては派遣も認めるため、派遣法で禁止されている分野との整合性を図る必要が出てくる。

 そもそも、技能実習制度の目的・趣旨は、わが国で培われた技能、技術又は知識の開発途上地域などへの移転を図り、当該開発途上地域の経済発展を担う「人づくり」に寄与することである。

 だが、実質的には日本の人手不足を補う低賃金の労働者拡充が目的になる可能性が高く、こうした現状でよいはずがない。本来ならば、高度な人材が日本に来て働き、税金を納めてくれるような制度設計にすべきである。そのためには、まず入り口でどのような外国人労働者が日本にとって必要か明確にしておくべきだ。

 技能実習法では「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(第3条第2項)と定めている。だが、政府は人手不足の状況に応じて外国人の受け入れ人数を調節するとしており、原則外国人を雇用の調整弁にすることは法の趣旨にそぐわない。

 一方、外国人労働者の雇用拡大をめぐっては、「雇用が不安定になった場合に治安が悪化しないか」「国内の労働者の給与低下や待遇悪化につながりかねない」との懸念もある。