2018年11月14日 13:23 公開

英国と欧州連合(EU)は13日、数カ月におよぶ交渉の末、ブレグジット(英国のEU離脱)に関する合意草案について合意した。

英内閣関係者によると、双方の高官らは今週、集中的に交渉を行い、技術面で草案の合意に至ったという。

テリーザ・メイ首相は14日午後2時(日本時間同午後11時)に特別閣議を開き、閣僚らに草案の承認を求める予定。

また、首相官邸で閣僚1人ひとりと面談し、合意草案について協議している。

BBCのローラ・クンスバーグ政治担当編集長によると、アイルランド国境に出入国審査を導入しないよう、合意草案には英国全土での関税「バックストップ(防御策)」が取り入れられている。

英国・北アイルランドに限ったバックストップは導入されないものの、英国全土のバックストップの中に北アイルランドだけの特別条件が含まれるかどうかは定かではないという。

アイルランドと北アイルランドの国境をめぐる「バックストップ」については、保守党内の離脱派やメイ政権と閣外協力する北アイルランドの民主統一党(DUP)から懸念の声も挙がり、離脱交渉の中で最も物議をかもした論点となった。


交渉がまとまったとの一報を受け、ポンド相場は対ドル、対ユーロで急上昇した。しかし内閣と英議会がまだ承認していないため、アナリストらはこの効果は持続しないかもしれないと警告している。

EUは14日にも情勢を「検討する」としている。また、アイルランド政府は交渉は「まだ続いており、まとまったわけではない」と述べた。

ボリス・ジョンソン前外相やジェイコブ・リース=モグ下院議員など保守党の離脱推進派は、合意草案の概要と報じられた内容に対し、英国をEUの支配下に置くものだとしてただちに批判した。

DUPも、草案は「非常に、非常に受け入れがたいものだ」としている。

一方、保守党のジュリアン・スミス下院院内幹事長は、草案が下院で可決される「確信」があると話した。クリス・グレイリング運輸相も、14日に内閣が草案を承認するまでは「少し落ち着くべき」だと訴えた。

英国とEUは、11月末に加盟国首脳会議を開き、合意をとりまとめたい考えだ。

合意草案の内容は?

合意草案の詳細は公表されていないため、細目は判明していない。

しかし、500ページにおよぶ離脱合意に加え、英国とEUの将来の関係についても概要が説明されているという。

離脱合意には、ここ数週間の交渉難航の原因だった北アイルランド国境問題について、具体的な出入国審査をいかに確実に避けるかの方法が示されている。

一部の離脱派は、この合意によって英国が今後数年間、摩擦のない国境を維持するためにEUの通商ルールに縛られるのではないかと懸念している。

離脱合意はこのほか、ブレグジット後の市民の権利や、2019年3月29日のブレグジット後に設けられた21カ月の移行期間、英国がEUに支払う390億ポンド(約5兆7800億円)もの「清算金」などにも言及する。

一方、英国とEUの長期的な通商協定はまだまとまっていないため、将来の関係についての言及は離脱合意に比べかなり短くなるとみられる。

英首相官邸は、閣僚らは「交渉チームがEU側とまとめた合意草案を検討し、次の段階を決定する」ための特別会議に招集されていると説明した。

閣僚らは会議の前に関係「書類」に目を通すことができるという。

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草案に反対しているのは?

9日に辞任したジョー・ジョンソン前運輸担当閣外相は、草案では英国が関税同盟および単一市場の「大部分」にとどまってしまうと述べた。

ジョンソン氏はBBCに、「民主主義を信じる人には全く受け入れられないものだ」と語り、下院では反対票を投じると話した。

リース=モグ議員は、この合意内容では英国が「属国」になり、北アイルランドは「アイルランド政府に統治されて」しまうと警告した。

BBCの報道番組「ニュースナイト」に出演したリース=モグ氏は、メイ首相に対する不信任案は求めていないとしたものの、「政策と個人があまりに緊密に結び付いていると、この政策を推進している人物を支持し続けるのは非常に難しい」と話した。

さらに草案については、「政府の交渉上の立場と、ブレグジット推進の失敗だ」と語った。

https://twitter.com/BBCPolitics/status/1062397090326867969


最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、「交渉の乱雑さを鑑みると、この合意は英国にとって良いものではないだろう」と話した。

また、親EU派のジャスティーン・グリーニング議員(保守党)は、この合意で英国の影響力は薄れ、信用も損なわれると指摘した。

EU離脱をめぐる2度目の国民投票を求める13日の集会に参加したグリーニング氏は、「この合意がいかに良くないか、分からない人が保守党内にいるとしても、それ以外の地球上の全員は分かるはずだ」と話した。

議事堂内のウェストミンスター・ホールで開かれたこの集会に参加したジョンソン氏は、閣僚らは「良心の奥深くを見つめて」この草案を承認するかを考えていると話した。

「幹事たちは議会中であらゆる政党の議員に圧力を掛けるだろうから、(承認の是非を)予測するのは難しい」

閣僚らは下院での与野党からの圧力を受け、アイルランドとのバックストップ案やその他の賛否両論だった取り決めについての法的判断を議員に提供することに同意している。

デイビッド・リディングトン内閣府担当相は、合意草案に対する投票の前に、ジェフリー・コックス法相が議員らに説明と質疑応答の機会を設けると話した。

リディングトン氏は、議員は「提出された離脱合意についての政府の政治的・法的立場を示した詳細かつ筋の通った報告」を見られるだろうと述べた。


<解説>EUからの視点――カティヤ・アドラーBBC欧州編集長

EUは13日は沈黙を貫いたが、何も起きていないわけではない。微妙な時期に黙っていることを好んでいるだけだ。

EUと英国の離脱交渉担当者は本当に、「相互理解」と説明するものに技術面で合意に至ったようだ。

しかし、これで合意成立ではない。あらゆる人が英内閣に注目している。もし閣僚らが草案を拒否すれば、交渉がまた始まることになる。

英内閣が草案を承認した場合、欧州委員会は15日に予定されるEU加盟27カ国の会議で、各国大使にブレグジット交渉で決定的な進捗(しんちょく)があったと伝えるだろう。つまり、2週間以内にメイ首相を含む首脳会議が開催されることになる。

それ以前に、加盟前27カ国と欧州議会も草案に目を通したがるだろうし、無批判では終わらないだろう。


(英語記事 Brexit text agreed in talks breakthrough