徴用工判決が下されるまでの一連の過程を見ると裁判に文氏が直接介入はしていないとしても、司法部が大統領の考えに影響されなかったとは言い難い。韓国の司法部が三権分立の原則を守れるほどの勇気があったかは疑問だ。

 判決は、二つ深刻な問題をはらんでいる。まず、韓国大法院が日本の企業に賠償金支払いを命じたのは、韓国人労働者を強制に動員したことは植民地統治時代の「不法行為」に当たり、ゆえに個人の請求権は消滅していないという論理だ。

 言い換えれば、植民地時代に不法行為に相当するものと判断されれば訴訟を起こし、勝訴する可能性が高いということだ。これから、徴用工に限らず、日本語の使用を強制されたのは不法行為だとして損害賠償を起こすことさえ可能かもしれない。

 次に、日本植民地統治時代の「不法行為」に対する裁判は、韓国司法管轄の問題であると「確認」されてしまったことだ。例えるなら、フランス植民地統治を受けたアフリカの某国が、植民地時代のフランスの植民地統治時代の不法行為を裁くことが可能になったのと同じだ。

 つまり、韓国大法院の判決はパンドラの箱を開けたといってもよい。法律を専門とするソウル大教授によると「今回の判決は、日帝強占時代(日本植民地時代)に行われたすべての不法行為に対し損害賠償請求訴訟を始められるという宣言だ」。

 このような動きに対し日本政府は「韓国において国際法違反の状態が生じている」(11月7日、菅義偉官房長官)と懸念を表明、判決を断固受け入れるつもりはないという姿勢だが、今の文政権は、日本が納得できるだけの答えを出さないのではないか。

 理由は主に二つある。まず、判決は、一部市民団体の情緒や左派寄りの政治理念を優先した判断だったとみるべきであり、文氏の政治性向、従来の日本植民地時代の歴史認識にも合致するものだからだ。

 もう一つは、文政権の外交政策に通じる判断でもあるからだ。北朝鮮問題にすべてを賭ける文政権は、日本と連携を組んでいるとの印象を北朝鮮に与えたくない。政権発足後、韓国外相は中国に対し「3つをしない約束」(中国政府の主張)をしたとされる。

 それは「日米韓関係を軍事同盟にはしない。アメリカのミサイル防衛システムには加入しない。高高度ミサイル防衛システム(THAAD)を追加配置しない」というものだ。北朝鮮に配慮しての措置といえる。
昼食会で韓国の文在寅大統領(左)から贈り物を受け取り笑顔を見せる金正恩委員長=2018年9月(平壌写真共同取材団)
昼食会で韓国の文在寅大統領(左)から贈り物を受け取り笑顔を見せる金正恩委員長=2018年9月(平壌写真共同取材団)
 今回の徴用工判決で日韓関係がギクシャクし、この問題が原因で日韓が協力しなくなれば、喜ぶのは北朝鮮だ。このような判断は決して韓国の国益にはならない。

 最近、日本のソフトバンクや日産などグローバル企業112社は、韓国の釜山とソウルで「日本就職博覧会」を開催し日本で働きたいと思う韓国の若者の募集に力を入れている。将来、このような日本企業の決断が裏目に出ないことを祈りたい。