文政権ににらまれているのは、政界関係者だけではない。崔順実(チェ・スンシル)ゲート事件で、汚職疑惑を追求されている財閥企業重役たちがいる。彼らは李明博(イ・ミョンバク)政権・朴槿恵政権の2代に渡り、保守政権を支えてきた。たたけばいくらでもホコリは出る。彼らを生かすも殺すも、現在の当局次第だ。

 10月5日には、収賄罪などで李明博元大統領に懲役15年の実刑判決が出た。これは財界に対する脅しである。財閥企業はこぞって、文政権にスリ寄っている。そして、財閥をスポンサーとしているテレビ局もまた、財閥を忖度(そんたく)して文政権を持ち上げる一方で、保守派をおとしめる情報操作に余念がない。

 このように、文大統領のあの温和な顔からはなかなか想像できないが、彼は恐怖政治によって徹底的に反対勢力を締め上げて、従北・左派の革命政権の基盤を築き上げようとしている。今回の徴用工裁判判決も、革命へ邁進(まいしん)する文政権にとっては「当然の使命」の一つなのだ。

 文大統領は今までとまったく違う新しい革命政権を打ち出すために、過去を完全否定する。朴正熙政権が残した1965年の日韓基本条約のような「負のレガシー」は、真っ先に否定すべきものなのだ。国際法を順守しようとするわれわれの常識は彼らに通用しない。

 徴用工裁判の判決が出る3日前の10月27日、韓国大法院(最高裁)付属機関、法院行政庁の林鍾憲(イム・ジョンホン)前次長が逮捕された。朴前政権の意向を受けて、徴用工裁判の判決を先送りした容疑を掛けられている。朴政権は判決が出ることで、日韓関係が悪化することを懸念していたのだ。

 そして、11月6日、このことを裏付ける当時の対外秘文書「将来シナリオ縮約」が公開された。この文書は前述の金淇春大統領秘書室長(当時)が、裁判を遅延させ、消滅時効(3年)を過ぎさせるよう、司法に圧力をかけたという内容のものである。

 今回、この文書の公開は決定打として利用された。元徴用工に対する日本の賠償責任を「認める者は善」、「認めない者は悪」という図式が見事に作り出され、韓国国民もこの図式にまんまと乗せられて、まともな判断ができなくなっている。文政権が用意周到に、徴用工裁判の判決を打ち出す計画を練っていたことがよくわかる。
韓国・釜山の日本総領事館付近で、徴用工像をめぐり警官隊ともみ合う労働団体メンバーら=2018年5月(共同)
韓国・釜山の日本総領事館付近で、徴用工像をめぐり警官隊ともみ合う労働団体メンバーら=2018年5月(共同)
 現在、検察は当時の大法院長(最高裁長官)らの関与についても捜査を進めており、新たな逮捕者が出る可能性もある。

 文政権は「積弊」という言葉を使っている。これは「保守政権時代に積み重なった弊害」を意味している。「積弊」を清算するという大義名分の下、保守派や反対勢力を葬り去ろうという革命が進行中なのだ。今回の徴用工裁判判決は革命という歴史の大転換において現れた「現象の一コマ」にすぎない。

 この左派革命の流れは最終的に、北朝鮮主導の赤化統一へと行き着く。それは、われわれにとって「荒唐無稽」なことであるが、彼らにとっては「遠大で偉大な目標」なのである。実際に、それへと向かう布石が今、一つ一つ着実に打たれている。