2018年11月16日 12:29 公開

英国と欧州連合(EU)が取りまとめ、英内閣が承認したブレグジット(英国のEU離脱)合意案をめぐって英国内が紛糾している。テリーザ・メイ英首相はこの案を強く推していく構えだが、15日にはドミニク・ラーブEU離脱担当相が辞任。マイケル・ゴーヴ環境相も辞任する見通しと伝えられている。

BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長によると、ゴーヴ氏はメイ首相からEU離脱担当相への就任を打診されたものの、首相が合意案の再交渉を許さない構えだったため、辞退したという。

前任のラーブ氏は合意案に「致命的な欠点」があるとして辞任した。

一方、メイ首相はこの案が「国民投票で国民が選んだことを実現する」ものだと強調している。

しかし15日の議会では保守党議員から、合意案は「死に体」で議員の支持は得られないと指摘された。この日の質疑は3時間近く続き、厳しい質問が飛び交った。

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メイ首相は16日午前、LBCラジオに出演し、視聴者からの質問に答える予定。

15日にゴーヴ氏の進退について質問されたメイ首相は、ゴーヴ氏は「環境省ですばらしい仕事をした」と答え、「まだ新しいEU離脱担当相を指名していないが、近いうちに指名する」と述べた。

ゴーヴ氏は2016年の国民投票でEU離脱派の中心人物だった。EU離脱担当相の打診に対しては、合意案に変更の余地があるなら受けると述べたものの、メイ首相は明確にそれを否定したため、就任を辞退したという。

この合意案をめぐってはラーブ氏に加え、エスター・マクヴェイ雇用・年金相も辞任した。

さらに、離脱派のジェイコブ・リース=モグ議員をはじめとする一部の保守党議員が、党の1922年委員会の委員長に首相不信任の書簡を提出した。書簡が48通に達すると、保守党議員による不信任案投票が行われる。

またクンスバーグ政治編集長によると、一部の閣僚らも、メイ氏に合意案の一部を変更させる手段を模索しているという。

与野党からの反発

離脱合意には、ブレグジット後の市民の権利や、2019年3月29日のブレグジット後に設けられた21カ月の移行期間、英国がEUに支払う390億ポンド(約5兆7800億円)もの「清算金」などに言及している。最も議論の的となった、アイルランドと英国・北アイルランドの国境をめぐる「バックストップ(防御策)」も示された。

メイ首相は15日、首相官邸での記者会見で「私が定めた道筋は、我々の国と国民全てにとって正しいものだと全身全霊を持って信じている」と強調した。

「リーダーシップとは簡単な決定ではなく、正しい決定を下すことだ」

メイ氏は合意案をまとめるための妥協に不満が出ているのは承知だと話した上で、この案は「国民投票で国民が選んだことを実現するもので、国益にかなうもの」だと述べ、「最後まで見届ける」と約束した。

しかし野党第一党・労働党のジェレミー・コービン党首はメイ首相に対し、「EU離脱相とその前任者が拒否した中途半端な合意案を議会で通すことは不可能だ」と述べた。

野党・自由民主党のサー・ヴィンス・ケーブル党首は、首相が現実から目を背けていると批判。「本当の選択肢は『ブレグジット中止』だと、首相自身が正しく結論した」と述べた。

与党・保守党議員からも、下院での支持は得られないと警告の声が挙がった。

保守党のマーク・フランソワ議員は、労働党だけでなく、スコットランド国民党や自由民主党、メイ首相と閣外協力する民主統一党(DUP)もこの案に反対票を投じる予定で、保守党からも80人以上が造反すると指摘。「この合意案を下院で可決するのは数学的に不可能だ」と述べ、合意案は「死に体」だと述べた。

こうした声に対しメイ首相は記者会見で、「英国民は私たちに、さっさと前に進めと求めている。その時に(合意案を破棄すれば)深刻な不安に満ちた道を選ぶことになる」と述べた。

合意案可決の見通しは

合意案を可決するには、メイ首相は下院の過半数に当たる320票を集めなくてはならない。

与党・保守党の議席は316議席と過半数に足りず、法案可決には閣外協力するDUPの10議席が必要となる。しかしBBCの調査によると、DUPは今回、合意案を支持しないもようだ。

さらに離脱強硬派や、2度目の国民投票を求めているEU残留派など70人弱の保守党議員も合意案を支持しない構えで、メイ首相が確保できるのは約250票とみられている。

労働党から造反者が出たとしても、320票に達するのは難しいとの見方が大半だ。


<分析>――ローラ・クンスバーグBBC政治編集長

政府は、少なくとも今日は、制御不可能な出来事に翻ろうされていた。

メイ首相の強硬姿勢も、深い深い問題を打ち消すことはできなかった。

党内で反乱が起き、閣僚たちが辞任し、メイ首相の不信任までほのめかされる中、我々はまだ、ブレグジットが予定通り行われるのかを知ることすらできない状態だ。

これから数日は、英政界に強風が吹き荒れるだろう。もしかしたら政府を吹き飛ばすほどの嵐になるかもしれない。


(英語記事 May defiant as Gove considers quitting