有価証券報告書には、役員報酬の考え方も書かれており、「当社の取締役に対する報酬は、平成15年6月19日開催の第104回定時株主総会において決議されたとおり、確定額金銭報酬と株価連動型インセンティブ受領権から構成されている」となっている。

 ゴーン氏と西川氏は、株価連動型インセンティブ受領権はなく、確定額金銭報酬だけだ。この点、報告書では「平成20年6月25日開催の第109回定時株主総会の決議により年額29億9000万円以内とされており、その範囲内で、企業報酬のコンサルタント、タワーズワトソン社による大手の多国籍企業の役員報酬のベンチマーク結果を参考に、個々の役員の会社業績に対する貢献により、それぞれの役員報酬が決定される」と記載されている。

 具体的にどのように算定していたかが、気になる。ちなみに、ゴーン氏と西川氏の2人で計12・34億円なので、他の取締役は4・2億円しかもらっていないことになる。一人当たり1億円にも満たない報酬であり、しかもゴーン氏と西川氏との格差は大きい。実際には、ゴーン氏が20億円近くもらっていたと報じられており、格差はさらに拡大する。

 率直にいえば、取締役各人の会社業績に対する貢献が分からない以上、合理的な算定は困難だろう。より客観的に行うためには、合理的な業績連動型の方が望ましいのではないか。米国の企業でも、役員の高額報酬が話題になるが、業績連動型であれば説明は容易である。いずれにしても、最終的には株主総会の議決があればいいので、適正なプロセスでクリアすればいい。

 もっとも、今回の場合には、虚偽の報酬額ということであるので、弁解の余地はない。その場合には、内部通報が有効なのだろう。もし、ゴーン氏が適正に役員報酬を有価証券報告書に記載していて、株主総会で了承されていれば、何の問題もなかっただろう。

 いずれにしても、今回は、ゴーン氏逮捕の後、日産はすぐにプレスリリースを出し、会長解任などの方向性を素早く打ち出し、西川社長による会見も行われた。内部通報を受けてから、数カ月もゴーン氏とケリー氏の内部調査を行い、同時に検察当局への報告もしていたというのだから、当然だろう。

 内部通報の時には、マスコミへのタレ込みも行われるものなので、今回も第一報を伝えたのは朝日新聞などであり、一部マスコミには情報も流れていたようだ。
横浜市の日産自動車グローバル本社=2018年11月20日(飯田英男撮影)
横浜市の日産自動車グローバル本社=2018年11月20日(飯田英男撮影)
 かつてであれば、リークを受けたマスコミは相当なアドバンテージがあっただろう。しかし、ゴーン氏逮捕の2時間後に、西川社長が記者会見するなどして、各マスコミのアドバンテージがほぼ消え去ったと言える。この記者会見は、インターネットでライブ配信されていたからだ。会見の前後、ネットでは夥(おびただ)しい情報が流れてきた。

 以前なら、社長の記者会見を報道するのはマスコミだけで、人々はマスコミ経由でものごとの真相を突き止めるしかすべがなかったが、今はネットで当事者の話が直接聞ける時代だ。当事者の直接の情報発信手段がなかった時代には、マスコミの助けがないと、不利になる恐れもあったが今は違う。

 今回の事件を見ると、従来のマスコミのポジションがなくなりつつあるように感じられた。少なくとも筆者には日産のプレスリリース、西川社長の記者会見と有価証券報告書があれば、十分な情報である。