橋下徹 木村草太
徳間書店『憲法問答』より
木村 2018年3月から始まったこの対談は、6月まで続き、計10時間以上に及ぶものでした。お疲れ様でした。

橋下 それでもまだ話し足りないくらいでしたね。もちろん、僕と木村さんとでは、考えていることは違うところがあるんだけど、こうやって話してみると面白かったですね。僕は政治家をやっていたときに木村さんを『報道ステーション』(テレビ朝日)で初めて見ました。若くて、なんだか憲法学者らしくない風貌で。

木村 あのころは坊主頭でしたね。当時は安保法制の論議があって、どの政党がどういう案を出しているのか全部把握しないとコメントできない。毎週毎週、時事問題を追いかけるというのは、憲法の研究者としてはあまりやらないことなので、本当に勉強になったと思います。

橋下 番組に出てコメントするなら、時事問題の追っかけはやらざるを得ないですもんね。変なこと言ったらはずかしいし。そのあとに僕がやっていた『橋下×羽鳥の番組』(テレビ朝日)に出演してもらいました。今回対談してみて、番組のほうはもっと木村草太を演じているなと思いましたね。

木村 テレビは限られた時間のなかで、編集でどこを切り取られてもいいように発言しなければなりませんから、神経戦になります。今回の対談ではそれと比べて、もう少しざっくばらんに話せましたね。橋下さんとは考え方が違いますが、コミュニケーションのベースは近いですよね。憲法に関わる問題は、感情的になると相互理解を拒否してしまいます。前提をひとつずつ踏んでいき、どこで意見が分かれているのかを追求しようというスタンスで話してくれるのは助かります。3回の対談で、橋下さんの知事や市長としての経験を伺って、手続法の大切さについてよくわかりました。

大阪市長時代の橋下徹氏=2015年6月18日、大阪市北区の市役所
大阪市長時代の橋下徹氏=2015年6月18日、大阪市北区の市役所
橋下 東京では僕のむちゃくちゃな様子ばかりが伝わっていると思いますが、自分なりに権力の適正行使を考え、手続きを踏んできたつもりなんです。僕がやっていることが全部正しいわけじゃないし、間違っていることはいっぱいあるかもしれない。ただし、ほかの政治家よりもかなり権力を行使した自覚があるからこそ、権力を使うための手順はちゃんと踏んできました。

 しかし結論だけ見られて「おかしい」とか「やりすぎ」と言われてきた。もちろんそういう批判はあると思うんですけど、手順は踏んでいるんです。君が代の起立斉唱条例も、右翼の象徴、国旗国歌信奉者みたいに言われるけど……。

木村 口パク確認はやりすぎですよ(笑)。

橋下 あれは、教育長がルールを守らせるということにこだわりました。口パク確認と報じられましたが、実際は、起立して歌っているかをざっと確認する程度だったんですけどね。彼も弁護士資格を持っています(笑)。

木村 橋下さんは、研究対象として面白いと感じています。物議をかもしますけれど、本人がただ乱暴をやっているわけじゃない。私個人として結論に賛同できないこともありますが、調べてみると、手続きや法律論を検討して動いていることがわかる。

橋下 特に憲法学者は表面的なところだけを見て、抽象的に、選挙至上主義者だとか民主主義の破壊者だとか批判してくる者が多かったですけど、木村さんは、僕のやってきたことの中身について具体的に批判してくれる。そのような分析、批判はありがたいです。