木村 大阪市の政治活動規制条例がありましたよね。私が橋下徹について調べたのはそれが最初です。

橋下 木村さん、議事録の誤植を見つけて市役所に連絡してくれたらしいね(笑)。それで市役所側は訂正したらしい。

木村 市役所って、そういう対応は、とても速いんですね。電話してみるもんだと思いました。橋下さんの慰安婦問題の発言をみても、「あんなやつらは知らない」と言っているただの差別主義者とは違う。でも一時的には「橋下徹、慰安婦を罵倒」といった雰囲気で伝えられます。

橋下 政治家はメッセージを広げるために、いわゆる炎上を利用することもありというのが持論です。それでも燃え広がりましたね(笑)。ただあの炎上で慰安婦問題についていろいろと議論がなされ国民も慰安婦問題をきちんと考えるようになったと思います。最後は朝日新聞の記事取り消しにまでいたりました。政治家の多くは、1965年の日韓基本条約と2015年の日韓合意を理由に、韓国は慰安婦問題をもう持ち出すなと言うけれど、僕は議論しないといけないと言い続けてきました。

 日本も韓国も民主国家であり、有権者の支持があって権力が成り立つ国です。ところが、韓国民、特にこれからの韓国を支える世代の多くが、慰安婦問題についての日本の対応に不満を抱いていますし、日韓合意も7割が反対しているような状況です。さらに、2000年の国連安保理決議1325では、女子に対する性的な戦争犯罪責任は永久的に追及される旨が規定されました。東アジアの地域において自由主義と民主主義を守るために日韓関係は重要であり、そうであれば両国民が真に納得する解決を探らなければなりません。

 戦争当時はいろんな国が日本と同じようなことをしていました。ところが今は欧米諸国が日本の慰安婦問題を特殊化し、それをスケープゴートにして、自らの責任を棚上げにしている。韓国だって同様のことをベトナムでやっていたことは明らかになっています。

 ただし、「世界でやっていたから日本も悪くない」と言って日本を正当化することは許されません。日本も悪いし、みんなも悪い。だからみんなで反省して二度とやらないように決意すればいい。でも韓国や欧米はそういう意識がないでしょ? 他方、日本にも「日本はまったく悪くない」と言い張る人たちも多い。
憲法と人権をテーマに基調講演する木村草太氏= 2016年9月25日、大和高田市
憲法と人権をテーマに基調講演する木村草太氏= 2016年9月25日、大和高田市
 日本だけが特殊だったわけではなく、戦時性暴力の問題は世界各国が抱えている問題で、だからこそ世界各国での反省と決意が必要なことを明らかにする。慰安婦像だって旧日本軍の行為に特定せずに、世界各国の反省と決意の碑文にすればいい。このような方向での解決であれば、日本人や韓国人の多くが納得すると思います。これが僕が言い続けてきたことです。

 8月14日に文在寅(ムンジェイン)韓国大統領が、「慰安婦問題は日韓の問題だけでなく、戦時の女性暴力として人類普遍の問題である。世界が反省し、二度と同じことを起こさないと決意することで解決される」と発言しました。まさに、これまで僕が言い続けてきたことと同じです。日本は、「慰安婦問題はすでに解決済み」と突き放すのではなく、「世界の反省と決意のために努力しよう」と韓国に呼びかけるべきです。