木村 確かに、戦時性暴力の問題は日本だけではなく、世界各国の問題として解決していくべきですね。ただ、それを日本が主導しようとするのは、「お前が言うな」という反発が強そうです。メディアでの議論を見ていると、日本だけが全部悪いか、もしくは日本はまったく悪くないかの極端な二択のなかで捉えられてしまいがちです。慰安婦問題に限らず、全否定か全肯定で判断されてしまうので、その間の議論の枠組みがないんでしょうね。

 意見は違いながらも、橋下さんと私の間に共通するコミュニケーションのベースは、法律家であることではないかと思います。橋下さんは弁護士ではありますが、法学部ではないんですよね。

橋下 そうなんです。政治経済学部の、しかも経済学科なんですよ。

木村 なぜ司法の道へ?

橋下 学生時代にやったビジネスで失敗しまして……。手形の不渡りをつかまされて、自分で訴訟を起こしたのがスタートですね。

木村 いきなり訴訟から入ったんですね。

橋下 そう、いきなり。木村さんも司法試験の勉強をされているからわかると思うのですが、普通は最初に憲法を習いますよね。でも僕はいきなり手形法から入って、民事訴訟法、商法と勉強してから、憲法を学んだんです。法律を机の上の勉強からだけでなく、実際の生活問題に活用する「実務」からも学んで「ああ、法律ってこういうことか」と理解していきました。ちょっと特殊なルートだと思います。

木村 政治経済学部で憲法の授業を受けることもなかった?

橋下 なかったです。それこそ憲法は予備校の、しかもビデオ授業のコースで学びました。木村さんはなぜ憲法学者になろうと思ったんですか。

木村 中学生のときに憲法の条文を読んで、自由っていいなと思ったんです(笑)。それで憲法学者になりたいと思っていたんですが、学者になるのは難しそうだなぁと。それなら、裁判官もいいんじゃないかと、高校のころに司法一次試験をとりました。センター試験一週間前が試験日でしたね。

橋下 ええー!? 高校でとったの? 司法一次はまず通らないし、だから誰も挑戦しないんですよね。大学の一般教養課程を修了すると免除になるので、みんな大学の教養課程を選びます。だって、司法一次は大学の教養課程よりはるかに難しくて、英語は英検1級より難しいんだから。
司法試験の合格発表で自分の番号を見つけ万歳して喜ぶ合格者=2017年9月、東京・霞が関
司法試験の合格発表で自分の番号を見つけ万歳して喜ぶ合格者=2017年9月、東京・霞が関
木村 そんなに難しかったかな(笑)。

橋下 東大の法学部の普通の入試をみんな一生懸命やっているときに、大学の一般教養課程修了レベルのやつを。やっぱりそういう人いるんだね……。

木村 でも、いざ二次試験の勉強を始めてみると、まぁつまらない。それで憲法学者を志しました。

橋下 憲法学者としてどうするんですか? 憲法学者でずっと生涯を送っていくわけ?

木村 えーと、まあ(笑)。

橋下 ずっと憲法だけで?

木村 憲法だけといっても、やることはたくさんあります。具体的な訴訟に関係するものだけでも、たとえば、生活保護と選択的夫婦別姓裁判の弁護士の相談に乗ったり、辺野古(へのこ)訴訟に意見書を書いたりしました。そういえば、橋下さんは夫婦別姓や同性婚には賛成の立場を取っているんですよね。